口座を売ってしまったらどうなる? 初犯でも起訴される可能性は?
昨今、SNSなどを介して銀行口座を他者に売買してしまう事案が増えています。しかし、こうした口座売買は、法律に反する反社会的行為であり、たとえ初犯であっても刑事責任を問われる可能性があることはご存じでしょうか。
本コラムでは、口座売買のリスクや、万一売ってしまった場合の対処法について解説します。
1. 口座売買は何の罪になる?
そもそも口座売買とは、自分名義で開設した銀行口座を第三者に売り渡すことを指します。
昨今、SNSやネット上でちょっとしたお小遣い稼ぎ程度の認識で口座売買に手を出す人が増えているようです。実際、口座の不正利用に伴う口座の利用停止や強制解約などの件数は、平成30年から令和4年にかけて、年々増えています。
しかし、口座売買はれっきとした犯罪であり、警察に逮捕されてしまう可能性もあるリスキーな行為です。
出典:一般社団法人 全国銀行協会「銀行口座の売買」(1)口座売買で問われる罪状と量刑
口座売買によって問われるおそれがある代表的な罪状としては、「詐欺罪」と「犯罪収益移転防止法違反」の2つがあります。
①詐欺罪
詐欺罪とは、他者にうそをついて財物をだまし取る行為に対する罪です(刑法第246条)。罰則は10年以下の懲役刑と定められています。
なぜ口座売買が詐欺罪にあたるのか、疑問に思う方もいるかもしれません。しかし、銀行口座とは通常、自分が使用することを前提に開設するものです。銀行側としては顧客が口座情報を第三者に売り渡すことは想定しておらず、その目的を知っていたら口座開設を認めません。
したがって、銀行へ虚偽の目的を告げて口座を開設し、その情報を他者に売買して利益を得ることは、銀行を欺く行為となり詐欺罪に該当します。
出典:e-Gov法令検索「刑法」②犯罪収益移転防止法違反
これは簡単に言うと、犯罪者やテロリストのお金の流れを断つための法律です。
売買された口座は、犯罪者が詐欺を働く際の入金口座として使用されたり、マネーロンダリングのために使用されたりするのが一般的です。つまり、口座売買は間接的に犯罪を助長する行為であり、そのため法律で禁じられています。
同法では、相手が他人になりすまして銀行取引をすることを知りながら預貯金通帳などを渡したり、正当な理由なく預貯金通帳などを売ったりする行為が禁じられています。口座売買に対する罰則は、1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金、あるいはその両方です。
出典:e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(2)逮捕されやすいケース
口座売買で特に逮捕されやすいのは、売却した口座が大規模な詐欺事件などで使用された場合です。これは単に「口座を売却した事実が警察に知られてしまうから」というだけでなく、「売却した口座を利用して現に多くの被害が発生した」という社会的影響力の大きさが関係しています。
報道などもされるような事件であれば、司法側としても今後の犯罪を抑制する意図もあり、関係者を厳格に処分する方向へと傾きやすくなります。たとえば、売却した口座が、高額の振り込め詐欺の受け取り口座として悪用された場合、口座を売買しただけの方も重い責任を問われる可能性があります。
2. 厳しい処分を避けるためには弁護士に相談を
上記のように、口座売買は法律に抵触する行為であり、時には初犯であっても逮捕・起訴されてしまう可能性があります。そのため、口座売買に万一関与してしまった場合は、厳しい処分を回避するために弁護士へ迅速に相談することが重要です。
これは警察からまだ連絡が来ていない場合も例外ではありません。というのも、速やかに口座売買の事実を認めて、警察に自首をしたり、銀行口座の凍結手続きをしたりすることで、不起訴処分になるケースもあるからです。
弁護士は、事件の経緯や性質、警察の動きなども踏まえながら、厳しい処分を避けるために有効な戦略やサポートを提供できます。
たとえば、弁護士はクライアントに対して、警察の取り調べでの適切な対応を助言したり、警察と交渉して不起訴処分にするように働きかけたりできます。さらには、被害者との示談交渉を代行することも可能です。
このように弁護士は、法律の専門家として多角的な支援を提供できます。特に警察からすでに連絡が来ている場合、一刻も早い対応が必要な状況だと認識し、弁護士へ速やかにご相談ください。
3. 刑事罰以外にもリスクがある
口座売買は、刑事罰の対象になるだけでなく、以下のようなリスクも伴います。口座売買をしようか迷っている方は、これらのリスクも踏まえ、決して手を出さないように心がけましょう。
(1)新規の口座を作れなくなる
口座売買したことが金融機関や警察に発覚した場合、その事実が信用情報に記録されます。これにより信用情報に傷がつき、金融機関で新しい銀行口座を開設するのが難しくなるおそれがあります。これはローンやクレジットカードの申請の認否にも悪影響を与えることです。
(2)銀行口座が凍結される
犯罪に利用されたとみなされる口座は、銀行によって凍結されることが一般的です。凍結されると、その口座は利用できなくなるため、自分のお金を入金したままでいた場合は引き出すことが不可能になります。凍結された口座の資金は、犯罪被害者への賠償に使用される可能性もあります。
(3)損害賠償請求を受ける
口座が犯罪行為、特に詐欺などで使用された場合、その被害者から損害賠償を請求されることがあります。たとえ直接的に詐欺を行っていなくても、口座提供者として連帯責任を問われる可能性は否定できません。
このように、口座売買はさまざまな面でリスクを伴うものです。目先の利益を求めて口座売買に手を出すことは断固として避けなければなりません。もしすでに口座売買をしてしまった場合は、速やかに弁護士へ相談して善後策を講じましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2024年08月26日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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