支払督促の進め方とそのメリット・デメリット
「友人や知人にお金を貸しているが全然返済をしてもらえない」など、お金の貸し借りでお困りの方も多いと思います。借りた側からの任意の支払いがなければ、最終的には訴訟も検討することになりますが、時間や費用がネックになり、積極的に踏み切れないケースもあります。
このような場合に考えられる債権回収の手段として、「支払督促」という選択肢があります。支払督促は、簡易かつ迅速な債権回収方法ですが、デメリットもありますので、よく理解したうえで利用することが重要です。
そこで、今回は債権回収を検討されている方へ向け、「支払督促」の進め方とメリット・デメリットについて解説します。
1. 支払督促の特徴とは?
債権回収手段としての支払督促にはどのような特徴があるのでしょうか。まずは支払い督促の概要やメリット・デメリットについて理解しましょう。
(1)支払督促とは
支払督促は、金銭の支払い、または有価証券や代替物の引き渡しを求める場合に限り、裁判所書記官が簡単な書類審査のみで実施する制度のことをいいます(民事訴訟法第382条以下)。
(2)支払い督促のメリット
支払督促には、以下のようなメリットがあります。
①借金などの時効の完成阻止
借金などの債権は、一定の期間、権利行使がない場合には、消滅時効によって権利が消滅してしまいます。令和2年4月1日から改正民法が施行され、貸金の時効については、原則として5年となりました。そのため、お金を貸したまま長期間返してもらえないという状態が続くと、時効によって債権自体が消滅してしまうこともあります。
もっとも、支払督促によって「債務名義」を取得することができれば、そのときから10年間時効期間が延長されます。そのため、時効が迫っているというケースでは有効な手段となり得ます。
②簡易かつ迅速な手続き
通常の訴訟と異なり、裁判所に出頭する必要がありません。また、裁判所に納める手数料も、通常の訴訟の半額程度になります。
(3)支払督促のデメリット
支払督促には、以下のようなデメリットがあります。
①異議申し立てにより、通常訴訟に移行する
支払督促は、簡易かつ迅速に債権回収を行うことができるというメリットがありますが、それは、相手から異議が出ないという前提の話です。
裁判所から支払督促を受け取った相手は、裁判所に対し「異議」を申し立てることができます。相手から異議申し立てがあったときには、支払督促から通常の裁判手続きに移行することになります。簡易かつ迅速に債権回収ができると想定し、支払督促を申し立てたにもかかわらず、通常の裁判になるのであれば最初から裁判をしておくべきだったという結果になることもあり得ます。
相手の異議によって手続が左右されてしまうのが、大きなデメリットといえます。
②管轄裁判所を選べない
支払督促の申し立ては、原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てを行います。そして、相手から異議の申し立てがあったときには、同じく相手の住所地を管轄する簡易裁判所か地方裁判所に手続きが移行します。
他方、当初から通常の裁判を起こしていれば、金銭債権であれば、原告の住所地を管轄する裁判所にも管轄が認められ、自宅の近くの裁判所で裁判を行うことができます。どの裁判所で裁判を行うのかは、出頭する手間などを考えるとできる限り自分の住所地の近くの裁判所を選択したいものです。
このように管轄裁判所の選択の自由がないというのも支払督促のデメリットとなります。
2. 支払督促の進め方
支払督促を申し立てるときには、以下のような流れになります。支払督促のデメリットを踏まえると当初から弁護士に依頼しておいた方がよい場合もあります。
(1)支払督促の流れ
支払督促は、以下のとおり、2段階の申し立てによって行います。
①支払督促の申し立て
相手(債務者)の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に支払督促の申し立てをします。申立書については、定型用紙が簡易裁判所の窓口にありますので、それを利用するとよいでしょう。
②仮執行宣言の申し立て
相手(債務者)が支払督促を受け取った日から2週間以内に異議の申し立てがなければ、仮執行宣言の申し立てを行います。仮執行宣言の申し立ては、異議申し立て期間である2週間を経過した日から30日以内に行わなければなりません。
仮執行宣言が発布され、相手が任意に支払わないときには、強制執行を申し立てることができます。
(2)弁護士への依頼が効率的
支払督促は、相手から異議が出された場合には通常の裁判に移行するというデメリットがあります。異議自体は簡単に出すことができますので、少しでも争いがあるようなケースでは、異議申し立てをされて通常の裁判に移行してしまいます。
支払督促から通常の裁判に移行した場合には、最初から裁判をした場合よりも時間がかかり、管轄裁判所の選択もできません。また、通常の裁判に移行したときには、債権者は、証拠によって請求内容を証明していかなければなりませんので、自分一人ですべて行うのは難しいことがあります。
デメリットを踏まえると当初から弁護士に依頼をして、裁判を行うほうが効率的である場合もあります。支払督促を検討している方は、まずは弁護士への相談をおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2021年04月05日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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