仮処分はなぜ必要? その理由や可能な条件や流れを解説

仮処分はなぜ必要? その理由や可能な条件や流れを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

民事裁判には長い時間がかかるものです。そのため、裁判をしている間に相手が争いの原因になっているものを売ってしまったといった事態も起こりえます。それを防ぐのが仮処分です。

本コラムでは仮処分の種類や流れについてご紹介していきましょう。

1. 仮処分はなぜ必要?

(1)民事保全とは

仮処分とは、民事保全の一種です。

民事保全とは、訴訟とは異なる手続きです。訴訟は、訴えを提起してから判決が確定するまでかなりの時間がかかります。

その間に、相手から回収できたはずの財産がなくなってしまったり、争いの対象となっている物を処分されてしまったりして、せっかく勝訴しても裁判の目的を達成できず、訴訟が無意味になってしまうことがあります。

このような事態を防ぐために、判決が確定する前に暫定的に一定の権能や地位を認める手続きを民事保全といいます。

民事保全には、金銭債務の支払いを保全するための「仮差押え」と、次に紹介する「仮処分」があります。

(2)仮処分の種類

仮処分は、下記2つの種類があります。

①係争物に関する仮処分

係争物とは、訴訟における争いの目的となっている物のことです。たとえば不動産の明け渡しを求める訴訟では、その不動産、動産の返還を求める訴訟においてはその動産をいいます。

係争物に関する仮処分は、係争物について債権者の権利の執行を確実にするために、その係争物の占有の移転を禁止したり、処分を禁止したりして、将来の権利の実行ができなくなってしまうことを防ぐための手段です。

②仮の地位を定める仮処分

仮の地位を定める仮処分とは、裁判で争っている間に、著しい損害を被る、または危険に遭うのを避けるために、暫定的な法律上の地位を定める手続きです。

たとえば、交通事故で入院しなければならず、仕事もできない状態となり、その日の生活費にも困るような場合に、加害者に対し、損害金の支払いを仮に命ずる仮処分がでることがあります。

また、不当に解雇されてしまい、労働者であることを争っている間の生活費に困った場合に、(元)使用者に対して賃金の支払いを仮に命ずる仮処分などもあります。

また、ネット掲示板やSNSで誹謗中傷やプライバシー侵害を受けた場合に、被害の拡散を防ぐために投稿の削除を仮に命ずる仮処分もあります。

2. 仮処分申し立ての流れ

(1)仮処分が認められるための要件

①被保全権利があること

被保全権利とは、保全命令が出されることによって守られる権利のことです。

②保全の必要性があること

保全の必要性とは、訴訟による紛争解決を待っていては、権利が将来執行できなくなってしまうために、民事保全手続きにより緊急に権利を保全しなければならないことです。

(2)仮処分の申し立ての流れ

①仮処分命令の申し立て

仮処分命令手続きは、債権者が裁判所に申し立てることにより開始されます。この申し立ては、書面で行わなければなりません。

主張書面や証拠で、仮処分命令が認められる要件を満たしていることを示します。

仮処分命令の申立書の作成や、その後の手続きは複雑かつ専門的なため、弁護士に依頼することをおすすめします。

②裁判所による審理

仮処分命令についての申し立てがなされると、裁判所は審理を行います。個々の事案によって流れは異なりますが、おおまかには次のような流れで進むでしょう。

まず、裁判所は債権者が提出した申立書一式について審査し、仮処分命令の要件を充足するのかを審査します。

次に、債権者の審尋を行います。裁判所は、債権者に対して申立書記載の主張および疎明について釈明を求める場合があります。この場合、債権者は、必要に応じて主張を補充します。

事件の内容が複雑な場合や、債務者に与える影響が大きかったり、債務者からも合理的な反論が予想されたりする場合には、債務者にも審尋の機会が与えられることがあります。

③担保

仮処分の中には、担保を立てる必要がある手続きもあります。

担保の額は、裁判所の自由な裁量によって決定されます。個々の事案における担保額の具体的な目安については、弁護士に確認しましょう。

④決定

審理終結後、裁判所は仮処分命令を認めるか否かの判断を下します。

仮処分命令の申し立てが認められなかった場合、債権者は、一定の期間内に即時抗告という不服申し立てをすることができます。

保全命令の申し立てが認められた場合、それに不服のある債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができます。

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