精神的苦痛はどう証明する? 慰謝料請求の手順を解説

精神的苦痛はどう証明する? 慰謝料請求の手順を解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

配偶者の不倫やモラハラ、職場でのセクハラやパワハラ、インターネット上の名誉毀損(きそん)や交通事故などで精神的苦痛を受けた場合、損害賠償金(慰謝料)の請求が可能です。

本コラムでは、精神的苦痛で損害賠償を請求できる具体的な事例について解説するほか、その証明方法や請求の詳しい手続きについても紹介します。

1. 精神的苦痛で損害賠償が認められるケース

精神的苦痛による損害賠償請求が認められるためには、相手方の不法行為が成立した上で、被害者側が受けた苦しみや悲しみといった精神的苦痛との因果関係を証明する必要があります。

精神的苦痛の定義と、損害賠償を請求できる具体的なケースについて解説します。

(1)精神的苦痛とは

精神的苦痛とは、相手の行動や言葉によって心が傷ついたり、気分が落ち込んだり、眠れなくなったり、食欲がなくなったりするなど、精神的にダメージを受けることを指します。

精神的苦痛を受けた人は、一定の条件を満たせば損害賠償を請求することが可能です。損害賠償金のうち、精神的損害に対するものを慰謝料といいます。民法第5章「不法行為」では、故意や過失によって他人の権利や利益を損害した場合には損害を賠償しなければならず(第709条)、財産以外の損害に対しても賠償の責任を負うことが定められています(第710条)。

また、民法415条では、契約上の義務(債務)が履行されない場合、損害賠償を請求できるとあります。ここでは財産以外の損害について明記はありませんが、実務上は債務の不履行によって受けた精神的苦痛に対しても、損害賠償の請求が認められています。

出典:e-Gov法令検索「民法

しかし、暴行などによって外傷を受けた場合と違い、傷ついた度合いを診断書などで客観的に示すことは困難です。また、同じ行為に対してどの程度精神が傷つくかは人によって大きく異なります。そのため、法的な手続きにおいては傷ついた精神ではなく、精神的苦痛を与えた行為そのものを見て、各ケースに応じた損害の有無や損害の度合いを判断することになります。

(2)精神的苦痛で損害賠償を請求できるケース

精神的苦痛による損害賠償請求が可能なのは、以下のケースです。

  • 男女のトラブル

    配偶者の不倫、DV、精神的・経済的DV、配偶者や恋人からのモラハラ、性行為の強要、避妊に協力しない など

  • 労働のトラブル

    不当解雇、セクハラ、パワハラ、モラハラ など

  • 名誉毀損やプライバシー侵害

    SNSや掲示板で個人情報を晒(さら)す、誹謗(ひぼう)中傷する など

  • 交通事故によるけがや後遺症

    事故のトラウマによるフラッシュバック、けがの治療で感じる恐怖や後遺症による将来への不安 など

このように慰謝料はさまざまなケースで請求できます。ただし、不倫を理由とする請求で自身も不倫をしているなど双方に問題があるケースや、企業側の悪質性が低い労働問題など、慰謝料を請求できない場合もあります。個別の事件について、慰謝料が認められるかどうかについては、弁護士などの専門家にご相談ください。

2. 精神的苦痛の証明方法

慰謝料を請求するための交渉や調停・裁判では、精神的苦痛を受けたことを証明できる、客観的な証拠をそろえなければなりません。各トラブルについて、証拠となりうるものは以下のとおりです。

  • 不倫・浮気

    不倫や浮気の事実を裏付ける写真、メール、LINEやSNSでのやり取り、通話記録 など

  • DVや精神的・経済的DV

    警察や各種機関への相談記録、映像や音声の記録、診断書や受診記録、けがや暴行現場の写真、日記、第三者の証言、家計簿や預金通帳(経済的DVの場合) など

  • セクハラ、パワハラ

    ハラスメントの様子を記録した映像や音声、メールのやり取りや通話記録、診断書(うつ病や胃痛など)、日記 など

  • 不当解雇

    雇用契約書、解雇通知書、解雇に関する文書やメールのやり取り など

  • 名誉毀損・プライバシー侵害

    該当画面のスクリーンショット、該当記事、会話を記録した音声や映像、SNSでのやり取り など

  • 交通事故によるけがや後遺症

    診断書、入院・通院期間がわかるもの など

3. 精神的苦痛による慰謝料請求を弁護士に依頼すべき理由

精神的苦痛による慰謝料を請求する場合には、相手方との交渉や法的手続きである調停・裁判などを利用することになります。

これらの手続きは法律の知識がなければ難しいため、専門家である弁護士に相談しましょう。相手との交渉や慰謝料の取り決めでは、当事者同士だと感情的になりやすく、慰謝料も相場を知らなければ本来請求できる額より低い額で済まされる可能性もあります。弁護士が間に立つことで、被害者は相手方と直接交渉する必要がないため精神的な負担を軽減でき、ケースに応じた適正額での慰謝料の交渉が可能です。

また交渉が決裂した場合、調停や裁判といった法的手続きに進むことになります。その際も、手続き書類の作成代行や証拠の提出など、調停や裁判に必要な手続きや事務的処理を弁護士に一任できます。被害者が納得のいく結果を得られるよう、専門的な知識を生かした包括的なサポートが可能です。

モラハラやセクハラなどで精神的苦痛を受けた場合、加害者に慰謝料を請求することが可能です。ただし、精神的苦痛による損害賠償請求を行うことは難しいため、まずは専門知識をもつ弁護士に相談することをおすすめします。

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  • こちらに掲載されている情報は、2024年07月21日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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