勤務態度の悪い社員を懲戒処分できる? 法律上の注意点とは。
勤務態度の悪い社員への対応や処分に悩んでいる会社は多いようです。ただし、たとえ勤務態度の悪い社員であっても、労働法規および日本の会社慣行では社員の権利や保護が優先される傾向があるため、その対応については慎重に行わなければなりません。
勤務態度の悪い社員への対応としてとるべきステップについてご説明します。
1. 処分に向けての注意点
勤務態度の悪い社員に何らかの処分をするときは、「客観性」と「社会通念上の妥当性」が重要です。
客観性とは、当該社員の勤務態度が悪い事実、それにより会社に何らかの悪影響が出ている事実を示す証拠ともいうべきものです。また、社会通念上の妥当性とは、その処分が社会的な慣行や一般常識、過去の事例と比較して重すぎたり軽すぎたりしないか、ということです。
また、就業規則も重要です。就業規則とは、禁止規定をはじめとした会社のルールを明文化したものです。会社が就業規則を社員に周知していることを前提に、社員は就業規則の内容そのものを労働契約の条件として就業しているというのが労働契約法第7条の考え方です。
したがって、就業規則を逸脱した悪い勤務態度は、当該社員が就業規則の内容を知らなかったという抗弁をしたとしても、就業規則に規定する懲戒規定に基づく処分を受ける理由となるのです。
2. 処分に向けたステップ
上記で述べた客観性、社会通念上の妥当性、就業規則の内容を踏まえ、勤務態度の悪い社員への対処を進めることになります。
ただし、刑事法規に抵触するような行為でもないかぎり、いきなり当該社員を解雇するというわけにはいきません。まずは、以下のようなステップにより、記録に残しながら、当該社員の勤務態度の改善を促してください。これは最終的に解雇に至ったとしても、当該社員が会社による解雇権の濫用を主張した場合に、会社が当該社員の勤務態度を改めるための努力を行っていたという事実を担保するものになります。
(1)注意指導
注意指導は、パワハラだといわれないようなトーンで、できるかぎり他の社員がいない場所で、当該社員に勤務態度を改めるよう何回も辛抱強く口頭で行うことが基本です。
それと同時に、メールや書面により注意指導を試みてください。注意指導をメールや書面で行うことは、会社が注意指導を行った事実を客観的な証拠として残す意味があります。
(2)誓約書や始末書の提出
勤務態度の悪い社員の将来を戒め今後の改善を促すために、当該社員が自ら作成した誓約書や始末書を提出させます。
これは、勤務態度が悪い事実について当該社員が自ら認めたという客観的な証拠にもなります。
(3)配置転換を行う
勤務態度の悪さは、当該社員が今の職場に適性がない可能性を示しています。このような場合に当該社員を他の職場へ配置転換することで、勤務態度の改善と生産性の低下を防ぐことが期待できます。
また、会社が社員のために配慮・努力を行っていたという客観的証拠を残すことにもなります。
(4)懲戒処分
退職勧奨や解雇に至る前の懲戒処分としては、就業規則に定める出勤停止・けん責・減給・降格などが挙げられます。いずれも当該社員が後日会社を訴えてきたなどのトラブルに備えるため、社員の勤務態度の悪さについて社会通念上相当である程度にとどめてください。
また、懲戒処分に至る経緯や判断した理由は、必ず記録に残しておいてください。
(5)退職勧奨
退職勧奨とは、会社から社員に対して自主退職を働きかけ、会社と社員による「合意退職」を目指すものです。よって、外見的には社員の「自己都合退職」です。会社からの退職勧奨に応じなければ懲戒解雇する「諭旨解雇」とは異なります。
もし退職勧奨を穏便かつ円滑に進めたい場合は、割増退職金の支給や再就職先のあっせんなど、社員に歩み寄った条件を提示する方法が考えられます。しかし、それが当該社員だけではなく他の社員のモラルハザードを起こさないように配慮してください。
なお、あまりにも執拗な退職勧奨は、会社による「退職強要」とみなされる可能性があります。もし退職強要を当該社員に訴えられた場合、会社にとって不利になる可能性があるため、注意が必要です。
(6)解雇
解雇は、当該社員の勤務態度の悪さを改めるために会社が行ったこれまでの手順を踏まえても改まらず、会社に与える悪影響が看過できないと判断できる場合に行う、最終手段です。
解雇には、普通解雇や諭旨解雇、懲戒解雇などがあり得ます。いずれにしても、会社による一方的な解雇は、その有効性をめぐり社員とトラブルになりやすいため、慎重な対応が必要です。
会社として法的リスクを最小化するために、勤務態度の悪い社員への対応は法的な要件を満たしながら慎重に進めていくべきでしょう。
そのときは、弁護士のアドバイスを受けながら進めていくことをおすすめします。まずは、会社法務に知見があり、労働問題の解決に実績のある弁護士に相談してみてください。
- こちらに掲載されている情報は、2021年05月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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