債権譲渡の対抗要件とは? 基本を分かりやすく解説

債権譲渡の対抗要件とは? 基本を分かりやすく解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

売掛金や貸付金の回収が難しい場合、債権回収会社などに対して債権譲渡を行うことも検討すべきです。債権譲渡に当たっては、対抗要件具備の手続きが必要となりますので、民法および動産・債権譲渡特例法のルールを理解しておきましょう。

今回は債権譲渡と対抗要件の概要や、債権譲渡の対抗要件を具備する方法などを解説します。

1. 債権譲渡とは?

「債権譲渡」とは、債権(=債務者に対して一定の行為を要求する権利)を第三者へ譲渡することをいいます。

性質上譲渡が許されないものを除き、債権は譲渡可能とされています(民法第466条第1項)。債権譲渡がなされた場合、譲渡人に代わって譲受人が新たな債権者となり、債務者に対して債務の履行を請求できるようになります。

典型的には、売掛金や貸付金などの金銭債権が回収できなくなった場合に、債権回収会社に対して債権譲渡をするケースが多いです。債権回収会社は、額面よりも割り引いた金額で債権を買い取り、債権回収を成功させて利益を得ることを目指します。

2. 対抗要件とは?

債権譲渡の取引を行うに当たっては、「対抗要件」を具備する手続きが必要になります。「対抗要件」とは、第三者に対して権利を主張するために備えるべき要件のことです。

(1)対抗要件の具備が必要な理由

債権譲渡は、現債権者である譲渡人と、新債権者となる譲受人の間の取引です。しかし債権譲渡の当事者でない債務者や第三者にとっては、その確たる証拠がない場合、本当に債権譲渡が行われたのかどうか分かりません。

そこで、債権譲渡の事実を債務者や第三者に主張するためには、対抗要件の具備が必要とされています。具体的には以下の場面において、対抗要件を具備した上での権利主張が必要となります。

  1. 対債務者
    債務の履行を請求する場合(=債権回収)
  2. 対第三者
    当該債権を差し押さえられた際に、債権譲渡が優先である旨を主張する場合

(2)債権譲渡の対抗要件を具備する方法

債権譲渡について、債務者対抗要件と第三者対抗要件のそれぞれを具備する方法は以下のとおりです(民法第467条、動産・債権譲渡特例法※第4条第1項、第2項)。

※正式名称:動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律

①債務者対抗要件

以下のいずれかの方法

  1. 債権譲渡をした旨を、譲渡人が債務者に通知する
  2. 債権譲渡を債務者が承諾する
  3. 債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がなされた後、譲渡人または譲受人が債務者に対し、登記事項証明書を交付して、当該債権譲渡登記がなされた旨を通知する※
  4. 債権譲渡登記がなされたことを債務者が承諾する※

※3. 4.については、法人が譲渡人である場合のみ

②第三者対抗要件

以下のいずれかの方法

  1. 債権譲渡をした旨を、譲渡人が債務者に確定日付のある証書によって通知する
  2. 債権譲渡を債務者が確定日付のある証書によって承諾する
  3. 債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がなされる※

※3.については、法人が譲渡人である場合のみ

(3)サイレント方式による債権譲渡について

企業間取引においては、債務者に知らせることなく、秘密裏に債権譲渡を行いたいというニーズが存在します。

たとえば、手元資金が不足している状況において運転資金を借り入れる際、弁済期未到来の債権を担保として差し入れる場合などです。このようなケースでは、差し押さえなどに備えて第三者対抗要件は具備しつつ、債務者対抗要件の具備は保留することになります。

民法に定められた対抗要件具備の方法は、債務者に対する通知または債務者の承諾であり、いずれも債務者に知らせず実現することは不可能です。

しかし、法人が譲渡人となる債権譲渡の場合は、動産・債権譲渡特例法に基づき、債務者に知らせず第三者対抗要件を具備することができます。つまり債権譲渡登記を行った上で、それを債務者に通知しなければよいのです。

これは「サイレント方式」と呼ばれており、企業間における債権譲渡(あるいは債権譲渡担保)の取引においてしばしば用いられています。

3. 債権譲渡を行う際には弁護士に相談を

債権譲渡を確実に行うためには、債権譲渡契約書の作成や対抗要件具備など、法的な観点から万全に手続きを進める必要があります。

特に、債権譲渡の対抗要件を具備する方法については、誤解されている部分も多いところです。弁護士に相談すれば、対抗要件具備に必要な債権譲渡通知・承諾の方法や、債権譲渡登記制度の概要などについてアドバイスを受けられます。

債権譲渡を検討している企業経営者・担当者の方は、弁護士にご相談ください。

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