株式譲渡を利用した事業承継のメリット・デメリットと留意点
  • 2021年04月15日 (更新:2021年07月15日)
  • 企業法務

株式譲渡を利用した事業承継のメリット・デメリットと留意点

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

中小企業が事業承継を行う際、もっとも多く用いられている手法が「株式譲渡」です。この記事では、株式譲渡を利用した事業承継のメリット・デメリット・留意点などについて、法律・税務の観点を踏まえつつ解説します。

1. 株式譲渡を利用した事業承継とは?

一般論として、株式会社の経営権を持っているのは「株主」であるとされています。

株主は、株主総会において、会社の経営を担当する取締役を選任することができますし、また会社の重要事項については、株主総会で直接決定する権利を持っているからです。

中小企業の場合、会社株式の過半数(場合によっては100%)を、創業者などの経営者が保有しているのが通常です。

この経営者が保有する自社株式を後継者または第三者に譲渡することによって、会社の経営権を移転するというのが、株式譲渡を利用した事業承継の概要になります。

2. 株式譲渡を利用した事業承継のメリット|手続きがシンプル

株式譲渡を利用した事業承継のメリットは、何と言っても手続きがシンプルな点にあります。

株式譲渡による事業承継の手続きは、大まかに以下のとおり整理されます。

  1. 株式譲渡契約を締結する
  2. 株式譲渡契約に従って、株式譲渡を実行する
  3. 取締役の選任・解任などに関する必要な手続きを行う

上記の手続きの中でメインとなるのは、①の株式譲渡契約の締結です。
この段階さえクリアしてしまえば、後は株式譲渡契約の内容に従って手続きを進めればよいため、株式譲渡による事業承継の工程はそれほど多くありません。

これに対して、たとえば合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付といった組織再編行為により事業承継を行う場合は、会社法に定められる複雑な手続きを一つずつ消化する必要があります。

また、事業譲渡により事業承継を行う場合には、権利義務が売主から買主に個別に移転することから、売主との間で契約を締結していた相手方から、契約の承継に関する承諾を個別に取得しなければなりません。

このように、他の手続きでは面倒な手続きが数多く発生することに比べて、株式譲渡の方法による場合は、比較的シンプルな手続きによって事業承継を実現できるメリットがあります。

3. 株式譲渡を利用した事業承継のデメリット|簿外債務の問題

株式譲渡による事業承継では、会社という「箱」はそのままに、株主(=経営者)だけが入れ替わります。当然、会社が当事者となっている債権・債務については、株式譲渡後もそのまま残存します。

株式譲渡による事業承継の際、旧株主から新株主への情報共有がきちんと行われていないと、新株主にとって予期せぬ簿外債務が存在したことが後から判明するなどのトラブルが生じかねません。

このような簿外債務の問題をクリアするためには、株式譲渡を実行する前に、弁護士に相談してきちんと法務デューデリジェンスを行うことが大切です。

4. 株式譲渡を利用した事業承継に関する留意点

株式譲渡を利用した事業承継を円滑に完了するには、法律・税務の観点を踏まえた事前の詳細な検討が不可欠です。
典型的には、以下の点が問題になり得るので、それぞれの論点について問題が生じないか、弁護士・税理士と相談しながら確認しましょう。

(1)名義株の問題

株主名簿上は株主とされているものの、実際には別の人が株主であるという状態を俗に「名義株」と呼んでいます。
たとえば会社設立時に、友人の名義を借りて形式上の株主になってもらっているケースなどが考えられます。

株式譲渡を行う場合、売主が対象株式を完全に保有していることが前提となりますので、実行前に名義株の問題をクリアしなければなりません。
名義株を保有しているのが誰であるかを確定するには、弁護士とともに法的な検討を行うことが必要です。

(2)遺留分の問題

創業者が後継者に会社株式を贈与(または低額で譲渡)する場合、当該贈与が遺留分侵害額請求の対象になる可能性があります。

譲渡した株式の価値は高額の場合が多いので、遺留分問題が生じてしまうと、親族同士の紛争が深刻化してしまうことは避けられません。

事業承継に関する遺留分問題を解決するには、会社法上の種類株式を活用する方法や、中小企業経営承継円滑化法の特例を活用する方法などが考えられますので、詳しくは弁護士にご相談ください。

(3)税務の問題

株式譲渡による事業承継が実行されたタイミングで、売主・買主の下で各種の課税が生じる場合があります。

売主については、売却価格と取得費の差額に対する譲渡所得課税が問題となります。贈与や低額での譲渡の場合でも、みなし譲渡所得課税が行われる可能性があるので注意が必要です。

一方買主については、会社株式の贈与または低額での譲渡を受けた場合について、贈与税の課税が問題となります。
事業承継時の贈与税の課税については、いわゆる「事業承継税制」を活用するなどの解決方法がありますので、詳しくは税理士などの専門家にご相談ください。

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