薬機法による広告規制とは? 違反しないための対処法も解説
薬機法では、医薬品等に関する広告の規制が定められています。誇大広告等の禁止などのルールに違反すると、刑事罰や行政処分、企業イメージの低下などのリスクを負うので要注意です。
薬機法の広告規制に違反しないためには、薬機法のルールとガイドラインを正しく理解すること、社内マニュアルやチェック体制を整備することなどが大切です。
法的な観点からの対策が必要になるので、弁護士のアドバイスを受けることをお勧めします。
本記事では薬機法の広告規制について、内容や違反した場合のリスク、違反を防ぐための対処法などを解説します。
1. 薬機法による規制の対象となる「広告」とは
薬機法では、医薬品等に関する広告の規制が設けられています。まずは、どのような広告が規制の対象とされているのかを確認しておきましょう。
(1)薬機法とは
「薬機法」とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品(=医薬品等)の品質や有効性、安全性を確保し、これらの使用による保健衛生上の危害の発生・拡大を防止することを目的とした法律です。
正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といいます。
薬機法における広告規制も、医薬品等の品質・有効性・安全性を確保するため、その製造や販売を行う事業者に適正な表示を行わせることを目的としています。
(2)薬機法で規制される「広告」の3要件とは
薬機法によって規制される医薬品等の広告については、行政通達によって3要件が示されています。
具体的には、医薬品等に関する表示のうち、以下の3つの要件を満たすものが薬機法上の「広告」に当たります(平成10年9月29日医薬監第148号)。
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誘引性
顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
(例)自社商品のメリットを強調している、販売を行う場所に掲示されているなど
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明示性
特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
※単に「漢方薬は体に良い」とだけ記載されていて、漢方薬の具体的な名称が記載されていない場合には、薬機法上の広告に当たらないと考えられます。
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③一般性
一般人が認知できる状態であること
(例)雑誌やウェブページに掲載されている、薬局の店頭に掲示されているなど
医薬品等に関するSNSの投稿・LP(ランディングページ)・メールマガジンなども、上記の3要件を満たしていれば、薬機法による広告規制の対象になり得るのでご注意ください。
なお、薬機法による広告規制の対象となるのは、医薬品等に関する表示のみです。特に実務上は、医薬品等に含まれる化粧品と、医薬品等に当たらない健康食品の境界線がよく問題になります。
自社が製造・販売している商品に薬機法の規制が適用されるか否かについては、弁護士にご相談ください。
2. 薬機法による広告規制の内容
薬機法による広告規制の内容を、具体例を交えながら解説します。
(1)誇大広告等の禁止
何人も、医薬品等の名称・製造方法・効能・効果・性能に関して、虚偽または誇大な記事を広告し、記述し、または流布してはなりません(薬機法第66条第1項)。
たとえば、すべての人の症状が改善するとは限らないのに「必ず改善する!」などと広告すると、虚偽広告や誇大広告に該当する可能性が高いと思われます。
また、医薬品等の効能・効果・性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、または流布した場合は薬機法違反となります(同条第2項)。
たとえば「医師推奨!強力な効果の痩せ薬」などと広告することは薬機法違反です。
さらに、医薬品等に関して堕胎を暗示し、またはわいせつにわたる文書・図画を用いることは一律禁止されています(同条第3項)。
(2)特定疾病用医薬品・再生医療等製品の広告の制限
がん・肉腫・白血病(=特定疾病)の治療への使用を目的とする医薬品と再生医療等製品については、一般消費者向けの広告に関する規制が設けられています(薬機法第67条第1項)。
上記の医薬品または再生医療等製品のうち、医師または歯科医師の指導の下で使用しなければ危険が大きいものについては、医薬関係者を除く一般消費者向けの広告を行ってはなりません(薬機法施行令第64条、薬機法施行規則第228条の10第1項・第2項)。
(3)承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品の広告の禁止
医薬品・医療機器・再生医療等製品については、販売する前に薬機法に基づく承認や認証を受けることが義務付けられています。
何人も、必要な承認や認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、その名称・製造方法・効能・効果・性能に関する広告をしてはなりません(薬機法第68条)。
3. 薬機法の広告規制に違反するとどうなる?
薬機法の広告規制に違反すると、刑事罰や行政処分、企業イメージの低下などのリスクが生じてしまいます。
(1)薬機法違反の広告事例
令和7年11月7日に、厚生労働大臣はインプレッション株式会社に対し、誇大・虚偽表示の禁止などを含む措置命令を行いました。
同社は「イアス 30000」という名称の家庭用電位治療器を一般消費者向けに販売していました。
その認証された効能・使用目的は「頭痛、肩こり、不眠症及び慢性便秘の緩解」であるにもかかわらず、糖尿病や高血圧等が緩和・治癒するかのような広告をしていたとのことです(例:「糖尿病が治る」「血液をきれいにする」)。
このように、確認されていない効能をアピールするような医薬品等の広告を行うと、薬機法違反の責任を問われるおそれがあります。
参考:「医薬品医療機器等法に基づく行政処分を行いました」|厚生労働省 参考:「医療機器で「糖尿病が治る」「血液きれいに」と虚偽広告、尼崎市の会社に厚労省が措置命令」(読売新聞オンライン)(2)薬機法に違反した場合のリスク①|刑事罰
医薬品等について虚偽または誇大な広告をした場合や、未承認医薬品等に関する広告を行った場合は「2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金」に処され、または拘禁刑と罰金が併科されます(薬機法第85条第4号)。
がん・肉腫・白血病(=特定疾病)について一般消費者向けの広告を行った場合は「1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金」に処され、または拘禁刑と罰金が併科されます(薬機法第86条第1項第17号)。
また、法人の代表者・代理人・使用人その他の従業者が、法人の業務に関して上記の違反行為をしたときは、法人にも上記の罰金刑が科されます(薬機法第90条第2号)。
(3)薬機法に違反した場合のリスク②|行政処分
薬機法違反の広告を行った者は、厚生労働大臣または都道府県知事から「措置命令」や「課徴金納付命令」を受けることがあります。
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措置命令(薬機法第72条の5)
違反広告の中止や再発防止のために必要な措置などが命じられます。
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課徴金納付命令(薬機法第75条の5の2)
虚偽広告や誇大広告によって得た売上総額の4.5%に相当する課徴金の納付が命じられます。
措置命令や課徴金納付命令は「行政処分」に当たり、対象者に対して法的拘束力を有します。法的拘束力のない行政指導よりも厳しく、対象者が受ける影響は大きいので十分ご注意ください。
(4)薬機法に違反した場合のリスク③|企業イメージの低下
薬機法に違反して措置命令などの行政処分を受けると、その事実が厚生労働省のウェブサイトで公表されるほか、報道やSNSなどを通じて社会全体に広まります。
薬機法違反の事実が周知されると、その企業は社会的な信頼を失い、売上の低下や従業員の離職などを招くおそれがあります。
特に近年では、コンプライアンス(法令遵守など)の要請が高まっているので、「薬機法違反を犯した企業」というイメージが付いてしまうのは大きなマイナスです。薬機法違反を疑われかねない虚偽広告や誇大広告は、厳に慎んでください。
4. 薬機法の広告規制に違反しないための対処法
薬機法に違反する広告を行わないようにするため、企業には以下のような取り組みが求められます。
(1)薬機法とガイドラインを正しく理解する
薬機法の広告規制はかなり複雑ですが、コンプライアンスを徹底するためには、その内容を正しく理解する必要があります。
法令の条文のほか、厚生労働省のウェブサイトに掲載されている行政通達(関係通知等)を確認することも大切です。「医薬品等適正広告基準」をはじめとして、多岐にわたる行政通達が掲載されています。
参考:「医薬品等の広告規制について」(厚生労働省)(2)社内マニュアルやチェック体制を整備する
広告担当者などの従業員が、薬機法のルールに沿った対応をスムーズにできるようにするためには、分かりやすい社内マニュアルを作成しておくことが効果的です。
また、広告担当者などが現場でチェックするだけでなく、法務担当者や外部弁護士などがダブルチェックを行う体制を整えると、薬機法違反の見落としを防ぎやすくなります。
(3)弁護士に相談する
薬機法のルールを正しく理解し、その内容を社内マニュアルに落とし込んだうえでチェック体制を整備するのは、非常に大変な作業です。多大な労力を要するうえに、幅広い専門的な知識を必要とします。
薬機法に関するコンプライアンスを強化するためには、弁護士のサポートが大いに役立ちます。
薬機法事案の対応経験が豊かな弁護士に相談すれば、製造・販売する医薬品等に特有の問題も踏まえたうえで、自社に合った対応の進め方についてアドバイスを受けられます。
薬機法の広告規制への対応に悩んでいる医薬品等のメーカーや販売業者は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
- こちらに掲載されている情報は、2026年01月07日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。