借用書が無効になる!? その理由と正しい作成方法

借用書が無効になる!? その理由と正しい作成方法

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

お金の貸し借りをする際には後々争いにならないように借用書を作成することが多いと思います。しかし、借用書を作成していたとしても契約が無効になる場合もありますので、法的に気を付けなければならないポイントがいくつか存在します。

今回は、借用書が無効になるケースや正しい借用書の作成方法について解説します。

1. 借用書が無効になるケースとは?

借用書を作成する際には、以下のような点に注意が必要です。

(1)借用書があっても契約が無効になるケース

借用書を作成していたとしても以下のようなケースでは、契約自体が無効になる場合があります。

①制限行為能力者との契約

制限行為能力者との取引は契約が取り消されることがあります。制限行為能力者とは以下の人です。

  • 未成年者
  • 成年被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人

上記に該当する人は、判断能力が十分でないまま契約を結ぶおそれがあります。そのため、法律上必要な同意なく契約した場合には契約が取り消される可能性があるのです。

具体的には、未成年者にお金を貸す場合には、親権者の同意が必要になります。親権者の同意なく、お金を貸した場合には、後日親権者から契約の取り消しを求められることがある、ということです。

②公序良俗違反の契約

公序良俗に反する契約は無効になります(民法90条)。犯罪目的での貸し借りや返済のために違法行為を要求する契約、過剰な利息を定める契約は、公序良俗に反して無効になる場合があります。

③錯誤による契約

金額など重要な部分に勘違いがあった場合には、「錯誤」(民法95条1項)として契約を取り消すことができます。借用書を作成する際には、借入金額に間違いがないかなど、勘違いにより思っていた内容と異なる契約をしないように注意が必要です。

(2)借用書の作成方法

借用書を作成することになった場合には、以下のことに注意して作成しましょう。

①借用書の項目

特に法律上の決まりはありませんが、借用書には、少なくとも以下の項目を記載するとよいでしょう。

  • 表題(「借用書、金銭消費貸借契約書」など)
  • 借用書作成日付
  • 契約金額
  • 利息や遅延損害金の取り決め
  • 返済期日
  • 返済方法
  • 「金銭を受領した」ということの明記
  • 金銭の受領日付
  • 借主の住所、氏名、押印
  • 貸主の住所、氏名、押印
  • 連帯保証人や保証人の取り決め

②自署と押印

借用書は、パソコンを使用して作成することもできます。しかし、パソコンデータは改ざんが容易なため、万が一争いになった場合に、すべてをパソコンで作成した借用書では、契約の有効性に疑義が生じることがあります。そのため、パソコンで借用書を作成する場合でも、貸主と借主の氏名は、自署で署名し、実印で押印するとよいでしょう。

③収入印紙

契約金額が1万円以上となる場合には、借用書に契約金額に応じた収入印紙を貼らなければなりません。収入印紙を貼らなかったとしても、契約が無効になることはありませんが、印紙税法違反により罰則が科されるおそれがありますので注意しましょう。

2. 借用書作成・債権回収は弁護士に相談を

お金の貸し借りをする場合には、個人で借用書を作成することも可能です。しかし、記載内容に不備があった場合には、借用書を作成していたとしても後日争いになる場合があります。

また、借用書は結局のところ訴訟で使える証拠として作成するわけですが、法律上立証しなければいけない事項が明示されているかという視点は、一般に出回っている借用書に抜けていることも多いです。法的に有効な借用書を作成しておくことで将来の債権回収を有利に進めることが可能になりますので、借用書の作成をお考えの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に借用書の作成を依頼することによって、適切な借用書を作成することができるだけでなく、トラブルを回避するための条項を契約書に盛り込むなど、将来を見越した提案をしてもらえることもあります。定型の契約書だけでは、個々に沿った対応は難しいため、弁護士のアドバイスを求めるのが有効です。

また、将来、債権回収をスムーズに実行するために、借用書は公正証書の形式にしておくことをおすすめします。公正証書にしておくことによって、将来債務者が返済を怠った場合には、面倒な裁判手続きを経ることなく、債務者の財産を差し押さえるなどの強制執行をすることが可能になります。滞ってしまった債権回収は早期に解決に向けた動きを起こすことが肝心です。お悩みの際は、まず弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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法的トラブルの解決につながるオリジナル記事を、弁護士監修のもとで発信している編集部です。法律の観点から様々なジャンルのお悩みをサポートしていきます。

  • こちらに掲載されている情報は、2022年01月25日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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