未払いの養育費は強制執行で回収できる? 手続きや必要なものを解説
  • 2021年04月05日
  • 債権回収

未払いの養育費は強制執行で回収できる? 手続きや必要なものを解説

弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

子どもの養育費をめぐっては「約束通りに支払われない」「滞納されている」といったトラブルは決して少なくありません。養育費を受け取れず、生活に困っている家庭もあるでしょう。

未払いの養育費は「強制執行」を使って回収できる可能性があります。利用条件や手続きをわかりやすく解説しますので、お困りの方はぜひ参考にしてください。

1.未払いの養育費を回収するための強制執行とは?

未払い養育費を回収する有効な手段の一つが「強制執行」です。どういった手続きなのかをご説明します。

(1)強制執行とは?

強制執行とは、借金が返済されないなど約束(債務)が守られないときに、国が財産を差し押さえるなどして、強制的に約束を守らせる法的手続きのことです。

養育費の場合、相手の貯金や不動産を差し押さえたり競売にかけたりして未払い分や将来分を回収できます。相手からの自主的な支払いが一番望ましいのですが、催促しても応じてもらえないこともあるでしょう。そういった場合に使う最終手段と考えてください。

(2)強制執行の対象財産

養育費の場合、強制執行の対象となるのは次の3つの財産です。

  • 不動産:土地、建物など
  • 動産:現金、家具家電、商品など
  • 債権:預金、給料、売掛金など

まとまった額の現金や預金を差し押さえられれば、一気に回収が進むでしょう。不動産も高額になる可能性がありますが、競売などが必要で現金化に時間と手間がかかります。

給料は養育費の場合、原則2分の1までしか差し押さえられませんが、一度認められればその後給料が支払われるたびに一定額を受け取れるため、安定して養育費を確保できます。

どれを強制執行の対象にするかは、相手の財産や養育費の金額により決めていきます。

2.強制執行をするための条件と手続きの流れ

強制執行は相手の財産を取り上げる強力な手続きのため、約束を守ってもらえないというだけでは利用できません。具体的には次のような条件があります。

(1)債務名義の保有

養育費の未払いで強制執行を申し立てる場合には、養育費について取り決めをした「債務名義」と呼ばれる文書が必要です。

たとえば次のようなものです。

  • 確定判決
  • 和解調書
  • 調停調書
  • 公正証書(強制執行を認める文言が入ったもの)
    など

離婚時に養育費について取り決めをし、その内容を公正証書にしていればそれが活用できます。債務名義がない場合は、まずは債務名義を得るために調停や裁判をしましょう。

なお一部の債務名義には強制執行を認める「執行文」の付与が必要です。裁判所や公証人に執行文の付与を依頼しましょう。また債務名義が相手に送達されたことを示す「送達証明書」も必要です。
それぞれ費用がかかるので注意してください。

(2)相手の財産情報

強制執行をする場合には、差し押さえや競売の対象財産を特定しなければいけません。どこにどのような財産がわからなければ、強制執行はできません。裁判所は調べてくれませんので、債権者側が調査する必要があります。

相手の預貯金のある銀行と支店名、所有不動産の種類と場所、勤務先などの情報を集めましょう。

離婚前に把握できていればベストですが、離婚後でも相手を裁判所に呼び出して財産について聞きとりをする「財産開示手続き」などにより調査できます。また、弁護士に調査してもらうこともできます。

強制執行をしたものの実際にはほとんど財産がなければ、費用倒れになってしまいますので、財産調査はしっかりと行いましょう。

(3)強制執行の流れ

強制執行は差し押さえ対象財産によって手続きが異なります。ここでは預貯金や給料といった債権の場合を見てみましょう。

  1. 債務名義の獲得、相手の財産調査
  2. 必要書類の準備
  3. 債務者の住所を管轄する裁判所に申し立て
  4. 認められれば「差押命令」発令
  5. 財産の差し押さえ、取り立て

申し立てに必要な書類は主に以下のようなものです。

  • 申立書
  • 執行文付きの債務名義
  • 送達証明書
  • 手数料、郵便切手

(4)法改正で強制執行のハードルが下がった

ここまでご説明したように、強制執行には債務名義の獲得と相手の財産情報の取得が必要です。

以前は強制執行ができる債務名義が限られていたり、相手の財産がわからなかったりして、未払いがあっても泣き寝入りしてしまう方が少なくありませんでした。

そこで令和2年4月、強制執行などについて定めた民事執行法が改正・施行されました。強制執行に関しては次のような変更がありました。

  • 強制執行を行える債務名義の種類拡大
  • 財産開示手続きに相手が協力しない場合の罰則強化
  • 市町村など第三者からの財産情報取得手続きの新設

この改正により強制執行を利用できる債権者が増えたほか、相手の財産情報を得やすくなりました。強制執行がしやすくなると期待されています。

養育費の未払いでお困りの方は、弁護士などのサポートを受けながら強制執行を進めてしっかりと養育費を確保しましょう。

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