- (更新:2021年09月28日)
- 行政事件
行政指導に強制力はある? 納得できないとき行うべき対応とは
国や地方公共団体から許認可を受けて事業や取引を行っている方の中には、行政指導という名目でさまざまな指示を受けることがあります。納得できない指示であったとしても従わなければ不利益を被るのではないかと考え、不本意ながら従っているという方もいるでしょう。このような行政指導に強制力はあるのでしょうか。
今回は、行政指導に強制力があるか、行政指導に納得できない場合の対応について解説します。
1. 行政指導に従わないとどうなる? 強制力はあるのか
行政機関から行政指導をなされた場合には、それに従わなければならないのでしょうか。
(1)行政指導とは
行政指導は、「行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう」と定義されています。(行政手続法2条6号)
たとえば、役所が特定の事業者に対してある行為をするように具体的に求める行為(指導、勧告、助言など)が行政指導にあたります。
行政指導か行政処分かは、用語自体から判別することができないこともありますので、どちらの行為にあたるかわからないようなときには、当該行為をする役所に確認してみるとよいでしょう。
(2)行政指導には強制力はない
上記の行政指導の定義からも明らかなように、行政指導は、処分ではありません。
そのため、相手方の権利を制限したり義務を課したりする法律上の拘束力はなく、あくまでも相手方の任意の協力を前提として行われるものです。
したがって、行政指導には、強制力はなく、行政指導を受けたとしても従わなければならないという義務はありません。
ただし、法制度によっては行政指導が具体的な処分の前段階に位置付けられているものもあります。そのようなケースでは、行政指導に従わない場合には、行政処分としての措置命令や業務停止命令が発動されることもあります。
そのため、行政指導を受けた場合には、どのような根拠に基づいて行われているのか、行政指導の先にどのような処分を予定しているかを十分に確認して慎重に対応する必要があります。
2. 行政指導に納得できないときとるべき対応
行政指導を受けたとしても指導内容に納得ができない場合には、以下のような対応をとるとよいでしょう。
(1)行政指導に従う意思がないことを示す
行政指導は、あくまでも相手方の任意の協力を得て行う必要があります。行政指導に従わないからといって行政機関が相手方に差別的、制裁的な取り扱いをすることを禁止しており、相手方が行政指導に従わないことを明らかにしたときには、行政指導を継続してはならないとされています。
したがって、行政指導に納得がいかないときには、行政機関に対して行政指導に従わない意思を明確に表示するとよいでしょう。
また、行政指導を行う場合には、行政機関は指導の趣旨や内容、指導の根拠や理由などについて相手方に示さなければならないとされています。当該行政指導の内容に納得できない場合には、書面でそれらの内容を明らかにするように求めるとよいでしょう(行政手続法35条3項)。
(2)「行政指導の中止等の求め」を行う
行政指導の中には、法律上、一定の法令違反がある場合に、行政機関が法令違反の是正を求める勧告などを行うことができる旨定められている場合があります。このような行政指導がなされた場合には、相手方は社会的信用を失うなどの事実上の不利益や事実を公表されることによる不利益を受けるおそれがあります。そこで、相手方の権利保護の観点から、一定の場合には、行政指導の中止等を求めることができます(行政手続法36条の2)。
「行政指導の中止等の求め」を行う場合には、以下の事項を記載した申出書を、行政指導をした行政機関に提出して行います。
- 申し出をする者の氏名または名称および住所または居所
- 法令に違反する事実の内容
- 当該処分または行政指導の内容
- 当該処分または行政指導の根拠となる法令の条項
- 当該処分または行政指導がされるべきであると思料する理由
- その他参考となる事項
- こちらに掲載されている情報は、2021年09月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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