
- 行政事件
アスベストによる健康被害とはどのようなもの? 賠償金を受け取れるかも
過去にアスベストを扱う仕事に従事し、アスベストを吸い込んだ場合には、重篤な健康被害が発生することが知られるようになってきました。このようなアスベストの健康被害が発生した被害者は、国から賠償金を受け取ることができる場合があります。
今回は、アスベストによる健康被害や救済制度について解説します。
1. アスベストの健康被害とはどのようなものなのか
アスベストによる健康被害にはどのようなものがあるのでしょうか。
(1)アスベストによる健康被害の原因
アスベストは、人の髪の毛の直径よりも細い繊維でできています。また、アスベストはとても丈夫で変化しにくいという性質があるため、アスベストを吸い込んでしまうと肺の組織内に長期間滞留してしまいます。
このように体内に滞留したアスベストが健康被害の原因となっています。
(2)アスベストによる健康被害の症状
アスベストによる健康被害の症状としては、以下の症状が挙げられます。
①中皮腫
中皮腫とは、肺を包む胸膜、腹部臓器を包む腹膜、心臓を包む心膜などにできる悪性腫瘍のことをいいます。
②肺がん
アスベストを吸い込むことによって、気管支または肺胞を覆う上皮に悪性の腫瘍が発生することがあります。肺がんは、中皮腫とは異なり、喫煙などによっても発生する疾病です。
③石綿肺
石綿肺とは、アスベストを大量に吸い込むことによって、肺が繊維化する「じん肺」という病気です。
④びまん性胸膜肥厚
びまん性胸膜肥厚とは、臓側胸膜の慢性線維性胸膜炎のことをいいます。本来癒着していない臓側胸膜と壁側胸膜が癒着することによって、広範囲に硬くなり、肺が膨らみにくくなるという状態です。
⑤良性石綿胸水
胸水とは、胸腔内に体液が貯留することをいいます。アスベストを吸入し、胸腔内に胸膜炎による胸水が生じた状態を良性石綿胸水といいます。
2. アスベスト健康被害の救済措置とは
アスベストによる健康被害が発生した場合には、以下のような救済措置によって被害の回復を図ることができます。
(1)労働者災害補償保険制度
労働者災害補償保険制度とは、いわゆる「労災保険制度」のことです。労災保険は、仕事中の病気や怪我に対して一定の補償を行う国の制度で、アスベストを取り扱う仕事によって健康被害が生じた労働者に対しても労災保険は適用されます。
アスベストを原因とする中皮腫や肺がんなどの疾病を発症した方は、労災申請をして認定を受けることによって、労災保険から補償を受けることが可能です。
労災保険で受けられる保険給付としては、以下のものがあります。
- 療養補償給付:療養の給付又は療養の費用の支給
- 休業補償給付:休業4日目から休業1日につき給付基礎日額の60%支給
- 傷病補償年金:年金支給
- 障害補償給付:年金または一時金支給
- 介護補償給付:介護費用支給
- 遺族補償給付及び葬祭料(葬祭給付):遺族に年金または一時金及び葬祭料の支給
(2)石綿健康被害救済制度
石綿健康被害救済制度とは、アスベストによって健康被害を受けた本人やその遺族に対し、医療費などの救済給付を行う制度のことをいいます。石綿健康被害救済制度を管轄しているのは、独立行政法人環境再生保全機構です。
アスベストによる健康被害が生じた方に対しては、基本的には上記の労災保険制度によって救済が図られます。しかし、時効などによって労災保険の適用を受けることができない方もいます。石綿健康被害救済制度は、このような労災保険の適用外となった被害者を救済する制度です。
(3)国家賠償制度
アスベストによる健康被害は、上記の労災保険制度や石綿健康被害救済制度によって、一定の補償を受けることが可能です。しかし、それらの補償は、アスベスト被害者の被った損害のすべてを回復するものではありません。アスベストによる被害者やその遺族は、労災保険制度や石綿健康被害救済制度による補償を受けていたとしても、別途国に対して損害賠償請求をすることができます。
国が定める要件を満たす場合には、病状に応じて国から550万円から1300万円の賠償金の支払いを受けることができます。
- こちらに掲載されている情報は、2021年09月24日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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