行政訴訟にはどのような種類があるのか、かんたんに解説します

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弁護士JP編集部 弁護士JP編集部

行政訴訟という言葉を聞いてどのようなことをイメージしますか。民事訴訟や刑事訴訟ならドラマや小説などで取り上げられることがあるため比較的イメージしやすいですが、行政訴訟については具体的にイメージできないという方がほとんどではないでしょうか。

今回は、行政訴訟にはどのような種類があるのかについてわかりやすく解説します。

1. 行政訴訟とは

行政訴訟とは、私人間の紛争である民事訴訟とは異なり、国や地方公共団体などの行政機関が行った処分によって義務を課され権利を制約された国民が行政庁を相手方として争う訴訟のことをいいます。

行政訴訟は、行政事件訴訟法という法律によって具体的に規定されており、行政事件訴訟法2条に定められた抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟という4つの訴訟類型に該当するものが行政事件訴訟と呼ばれるものです。

行政事件訴訟については、その性質によって大きく主観訴訟と客観訴訟の2つに分けることができます。主観訴訟とは、国民の個人的な権利利益の保護を目的とするものであり、抗告訴訟と当事者訴訟が該当します。客観訴訟とは、客観的な法秩序の維持のために、原告の個人的な権利利益とは無関係に、行政作用の適法性を担保することを目的とするものであり、民衆訴訟、機関訴訟が該当します。

2. 行政訴訟の種類

以下では、行政事件訴訟の抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟という4つの訴訟類型について説明します。

(1)抗告訴訟

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟のことをいいます(行政事件訴訟法3条1項)。行政訴訟の中核となるのがこの抗告訴訟であり、行政事件訴訟法では、以下の6つを抗告訴訟として規定しています。

①処分の取り消しの訴え

処分の取り消しの訴えとは、行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為について、その全部または一部の取り消しを求め、当該行為の法的効力を遡って消滅させる形成訴訟です。

たとえば、営業停止処分の取り消しの訴えなどがこれに該当します。

②裁決の取り消しの訴え

裁決の取り消しの訴えとは、審査請求などの不服申し立てに対する行政庁の裁決などの取り消しを求める訴訟です。

たとえば、免許取り消し処分に対して審査請求を行った裁決結果に不服がある場合の裁決の取り消しなどがこれに該当します。

③無効等確認の訴え

無効確認の訴えとは、処分・裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴えをいいます。行政処分が無効といえる場合には、出訴期間の制約なく訴えを提起することができます。

たとえば、課税処分の無効確認の訴えなどがこれにあたります。

④不作為の違法確認の訴え

不作為の違法確認の訴えとは、国民が行政庁に対して法令に基づく申請をしたにもかかわらず、行政庁が処分・裁決をしないことについて違法の確認を求める訴訟のことをいいます。

たとえば、生活保護の申請に対して応答がない場合の違法確認の訴えなどがこれにあたります。

⑤義務付けの訴え

義務付けの訴えとは、行政庁が処分をすべきであるにもかかわらず処分をしない場合に、処分をするように義務付ける訴訟のことをいいます。

たとえば、原子力施設の改善命令の義務付け訴訟などがこれにあたります。

⑥差し止めの訴え

差し止めの訴えとは、行政庁が処分をすべきでないのに処分をしようとする場合に、当該処分を差し止める訴訟のことをいいます。

たとえば、自衛隊機運行差止訴訟などがこれにあたります。

(2)当事者訴訟

当事者訴訟とは、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの(形式的当事者訴訟)」および「公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟(実質的当事者訴訟)」のことをいいます(行政事件訴訟法4条)。

たとえば、以下のものが当事者訴訟にあたります。

  • 土地収用法の損失補償額に関する訴え(土地収用法133条3項)
  • 日本国籍を有することの確認訴訟
  • 公務員の俸給請求訴訟

(3)民衆訴訟

民衆訴訟とは、国または公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいいます(行政事件訴訟法5条)。

民衆訴訟は、客観訴訟ですので誰でも訴えを提起することはできず、法律に特別の定めがある場合に限って訴えを提起することができます。

たとえば、選挙に関する訴訟や住民訴訟などがこれにあたります。

(4)機関訴訟

機関訴訟とは、国または公共団体の機関相互間における権限の存否またはその行使に関する紛争についての訴訟のことをいいます(行政事件訴訟法6条)。

機関訴訟も客観訴訟ですので、法律に特別に定めがある場合に限って訴えを提起することが可能です。

たとえば、地方公共団体の長と議会の紛争、代執行訴訟、国の関与に関する訴訟などがこれにあたります。

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