
9級の等級が認定される可能性のある後遺障害とは?
交通事故でケガをした場合、治療を行っても症状が完治せず、後遺症が残ってしまうことがあります。後遺症が生じた場合には、審査機関に認定手続きを行うことで、症状の程度に応じた「後遺障害等級」が認定される可能性があります。
本コラムでは、「9級」の等級が認定される可能性のある後遺障害とその賠償金額について解説します。
1. 交通事故の後遺障害等級とは?
交通事故の被害に遭ってケガの症状が後遺症として残った場合には、「後遺障害等級」が認定される可能性があります。後遺障害等級の認定の可否や、何級が認定されるかは、損害賠償の金額に大きな影響を与える重要なものです。
(1)後遺障害とは
交通事故でケガを負った場合には、治療を継続したとしても完治せず、痛みやしびれが残ったり関節を動かすことが難しくなったりするなど、後遺症が残ってしまうことがあります。
後遺症が残っているとき、以下のような場合には、後遺障害の内容や程度に応じた等級認定を受けることができる可能性があります。
- 症状固定時点において「後遺障害等級表」に記載のある症状が残存すること
- 交通事故と症状との間に相当因果関係があること
- 将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的なき損状態であること
- 症状の存在が医学的に認められること
- 労働能力の喪失を伴う症状であること
(2)後遺障害等級の認定の申請手続きとは
自賠責保険会社に必要書類を提出して申請を行い、自賠責保険会社から損害保険料率算出機構という機関に必要書類が送付され、同機構において後遺障害等級認定の審査がなされます。認定の方法には、「事前認定」と「被害者請求」の2種類があります。
①事前認定
事前認定とは、相手方の保険会社が審査機関に書類を提出して、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。事前認定には、以下のようなメリットとデメリットがあります。
-
メリット
書類の作成や資料収集などの申請手続きをすべて相手方の保険会社に任せられるので、手間がかからない。
-
デメリット
提出する書類の内容を相手方の保険会社に任せるため、等級の認定に有利になるような証拠が含まれない可能性がある。後遺障害等級が認定されても、すぐに自賠責保険分の保険金が支払われるわけではない。
②被害者請求
被害者請求とは、被害者側で書類を準備したうえで、後遺障害等級認定の申請手続きを行う方法です。被害者請求のメリットとデメリットは、以下のとおりです。
-
メリット
提出する書類の準備を被害者側が行うため、等級の認定が有利になるような証拠を含めることができる。後遺障害等級が認定されたら、相手方との示談の前でも自賠責保険から保険金を受領することができる。
-
デメリット
申請手続きをすべて被害者側で行わなければならないため、時間と手間がかかる。
この点、弁護士に依頼をすれば、被害者請求での申請の手続きを弁護士にて行うことが可能です。出来る限り被害者側に有利な証拠を揃えて申請を行うためにも、後遺障害の認定の申請の手続きを弁護士に依頼することを検討してみてもいいでしょう。
2. 後遺障害等級が「9級」になる場合とは?
後遺障害等級9級が認定される可能性のある後遺障害や、9級が認定された場合の損害額について、解説します。
(1)後遺障害等級9級に該当する後遺障害
後遺障害等級表では、9級に該当する障害が、以下のとおり1号から17号まで規定されています。
- 両目の視力が0.6以下になったもの
- 1眼の視力が0.06以下になったもの
- 両目に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
- 両目のまぶたに著しい欠損を残すもの
- 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
- 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
- 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
- 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの
- 1耳の聴力を全く失ったもの
- 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 1手のおや指又はおや指を含み2以上の手指を失ったもの
- 1指のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
- 1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの
- 1足の足指の全部の用を廃したもの
- 外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 生殖器に著しい症状を残すもの
(2)後遺障害等級9級が認定された場合の損害額
通常、交通事故の被害者は、加害者側に対して治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料、などの損害賠償を請求することができます。
そして、後遺障害等級が認定された場合には、上記に加えて「後遺障害慰謝料」と「後遺障害逸失利益」を請求することができるようになります。

①後遺障害慰謝料
後遺障害等級9級の認定を受けた場合には、「後遺症を負ったことによる精神的苦痛」への損害賠償として、被害者は加害者に後遺障害慰謝料を請求できます。
慰謝料の金額を算定する際に用いられる基準には、弁護士基準(裁判基準)・任意保険基準・自賠責保険基準の3種類があります。このなかで最も低額な基準が自賠責保険基準であり、最も高額な基準が弁護士基準となります。
それぞれの基準に基づく後遺障害等級9級の後遺障害慰謝料の相場は、以下のとおりになります。
-
自賠責保険基準
249万円(令和2年3月31日以前の交通事故については245万円)
-
弁護士基準
690万円
②後遺障害逸失利益
後遺障害が残った場合には、身体の動作や集中力などに支障が生じることにより、労働能力の一部が喪失することになります。これにより、将来にわたって、後遺症がなかった場合には得られていたはずの収入が失われるという損害が、事故の被害者に発生することになります。
この損害に対する賠償は「後遺障害逸失利益」として、加害者に請求することができるのです。
逸失利益の金額は、事故前の被害者の収入、被害者の年齢(若いほど、労働能力を喪失する期間が長くなると判断されて金額が高くなります)、そして後遺障害の等級ごとに定められている「労働能力喪失率」等に基づいて、算定されます。
後遺障害等級9級では、労働能力喪失率は原則として「35%」になっております。
交通事故の被害に遭って後遺障害が残った場合には、慰謝料や逸失利益を加害者に請求するために、後遺障害等級の認定の被害者申請や加害者側との示談交渉を弁護士に依頼することをおすすめします。
- こちらに掲載されている情報は、2025年05月20日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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