
追突事故の被害者が請求できる慰謝料は? 適正額を請求する方法も解説
数ある交通事故の中でも、追突事故は発生件数の多い事故類型です。停車中に突然後方から追突され、ケガを負ってしまった方も多くいらっしゃるでしょう。
追突事故の被害者は加害者に対して、慰謝料を含む損害賠償を求めることができます。今回は、自動車追突事故の被害者の方に向けて、慰謝料の種類や基準、請求方法など、知っておくべきポイントを見ていきましょう。
1. 追突事故の被害者がまずするべきこと
追突事故の被害に遭ったら、以下の3つの行動に着手しましょう。
(1)追突事故直後に警察に通報
警察へ必ず通報しましょう。まれに、加害者が警察に通報しないように頼んでくることがありますが耳を貸す必要はありません。警察に通報をして交通事故証明書を取得できなければ、ケガについての賠償金を受け取れない可能性があります。当日通報できなかった場合は、後日警察に届け出ることも可能です。
(2)事故から数日以内に医療機関を受診
その場で痛みや違和感がない場合であっても、医療機関を受診しましょう。追突事故では無自覚のうちに頭部に衝撃が加わっていることも多く、事故から数日して症状が現れることもあります。
また、事故から時間が経過してから医療機関を受診した場合、事故とケガの因果関係が証明しにくくなってしまい、加害者からの賠償を受けられない可能性があります。
(3)加害者から示談を持ちかけられても応じない
追突事故の加害者がその場で示談を求めてくることがあるかもしれませんが、これには応じないでください。示談が成立すれば、後に症状が出てしまった場合に慰謝料などの賠償金を請求することが難しくなります。
2. 請求できる慰謝料の種類
そもそも慰謝料とは精神的苦痛に対する賠償金のことです。追突されてケガをした場合に請求できる慰謝料は「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類です。
(1)入通院慰謝料
入通院慰謝料は、交通事故によってケガを負ってしまい、入通院が必要になった場合の精神的苦痛に対する賠償金です。入通院の期間や日数に応じて支払われます。
(2)後遺障害慰謝料
後遺障害とは、交通事故のケガが完治せず、痛みや傷など一定の症状が残存してしまうことをいいます。後遺障害が生じた場合、所定の手続きのうえで後遺障害等級が認められれば、その等級に応じて精神的苦痛に対する慰謝料を請求することが可能です。
3. 慰謝料の計算方法と3つの基準
交通事故の慰謝料には「自賠責保険基準」「任意保険基準」「裁判所基準」という3つの算定基準が存在します。
(1)自賠責保険基準
自賠責保険基準とは、強制保険である自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)で規定されている慰謝料算定基準です。
自賠責保険基準による入通院慰謝料は、以下の2つの数値を比較して低いほうに4300円(日額)をかけて算出します。
- 初診から治療終了までの入通院期間
- 実際に入通院した日数×2
これはあくまで最低限の補償額でしかないため、これだけでは十分な補償を受けることはできません。
(2)任意保険基準
任意保険基準とは、その名のとおり、任意保険会社が独自に設定する基準です。各保険会社が定めるため、基準や計算方法は明らかにされていません。一般的には、自賠責保険基準と同じくらいか少し高い程度です。
(3)裁判所基準
裁判所基準とは、過去の交通事故事件の裁判例を元に定められた基準です。自賠責保険基準や任意保険基準と比較して高額に設定されており、症状に応じて2~3倍以上になることもあります。弁護士が慰謝料を請求する場合には、裁判所基準を前提にするため、弁護士基準と呼ばれることもあります。
3. 追突事故でむちうちを負った場合
追突事故で最も多いケガのひとつにむちうちがあげられます。
(1)むちうちとは?
むちうちとは、正式には頸椎捻挫と呼ばれるケガで、交通事故の衝撃によって首がムチのようにしなり、頸椎やその周辺の筋肉や靭帯、神経などが損傷することで起こります。事故直後は自覚症状がない場合もありますが、後から痛みやしびれなどの症状が現れることも少なくありません。
むちうちになった場合、前述した後遺障害慰謝料を請求できる可能性があります。
(2)むちうちで後遺障害慰謝料を受けるには
後遺障害慰謝料を請求するためには、まず後遺障害等級認定を受ける必要があります。後遺障害等級認定とは、交通事故の後遺障害の程度を1級から14級までの等級で認定する制度です。等級が高いほど、後遺障害の程度が重いと判断され、慰謝料の金額も高くなります。
むちうちによる後遺障害は、12級13号または14級9号が認定される可能性があります。12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」で、14級9号は「局部に神経症状を残すもの」とされています。
むちうちで後遺障害等級認定を受けるためには、以下の点が重要です。
①医師の診断書
後遺障害等級認定申請には、医師の診断書が必須です。診断書には、事故との因果関係、症状の程度、治療経過などが詳しく記載されている必要があります
②画像検査
レントゲンやMRIなどの画像検査の結果も、後遺障害等級認定の判断材料になります。
③治療期間
基本的には通院日数合計60日以上、通院期間は6ヶ月以上が目安と言われています。
後遺障害等級認定をスムーズに受けるためには、交通事故の経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士は、後遺障害等級認定の申請手続きを代行したり、医師と連携して適切な診断書作成をサポートしたり、保険会社との交渉を有利に進めたりすることができます。
4. ケガがなくとも慰謝料を請求できる?
ケガをしていなかった場合は、以下のような損害賠償を請求することができます。
- 物的損害(物損): 車の修理代、代車費用、評価損など
- 休車損害:タクシーやトラックなどの営業車が、修理のために営業できなかったことによる逸失利益
慰謝料請求は原則として認められません。慰謝料は、精神的苦痛に対する賠償であり、物損事故では、被害者自身にケガがない限り、精神的苦痛は認められないと考えられているためです。
ただし、例外的に以下のような慰謝料が認められるケースもあります。
- 動物が死亡した場合
- 動物に後遺症が残った場合
- ペットが死亡・負傷した場合で、財産的価値の賠償だけでは癒されない精神的苦痛を被った場合
- 芸術作品など今後購入することができないものが損傷を受けた場合
- 生活の平穏の侵害など、無形の不利益を受けた場合
これらのケースでは、裁判で慰謝料が認められる可能性があります。慰謝料請求を検討する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
5. 適切な慰謝料を請求する方法
追突事故を起こされたら、まずはしっかりと病院へ通いましょう。入通院慰謝料は通院日数や通院期間がベースになりますので、受診しないことには入通院慰謝料を受け取ることができません。
また、後遺障害慰謝料を受け取るには、基本的に後遺障害等級の認定を受ける必要があり、医師の診断書や検査内容だけでなく、通院頻度も重要です。
被害者自身で任意保険会社と慰謝料の交渉をする場合、被害者が行う手続きはそれほど多くありません。そのかわり、「慰謝料が低額になる可能性がある」「交渉の際に不快な思いをすることがある」といったデメリットがあります。
6. 適切な慰謝料を受け取るためには弁護士へご相談を
追突事故の被害に遭った場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼をすると、以下のメリットがあります。
- 慰謝料・示談金の増額
- 加害者側とのやりとりからの解放
- 専門的なアドバイスやサポート
また弁護士費用特約を利用することで、多くの場合、自己負担なく弁護士に依頼をすることができます。
示談成立後、示談内容を覆すことは非常に困難です。不安な点がある場合は、示談する前に必ず弁護士に相談しましょう。
- こちらに掲載されている情報は、2025年04月23日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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