
交通事故で起こりやすいむちうちとは? その症状と後遺障害等級認定
交通事故の中でも比較的多い類型が、停車中に後続車にぶつけられてしまったという追突事故です。そして、追突事故の被害者の方は、むちうちの症状が生じることが少なくありません。
本コラムでは、交通事故でよくあるむちうちの症状や通院先、慰謝料、後遺障害等級認定などについて解説します。
1. むちうちとはどのような症状?
「むちうち」という言葉自体はよく聞きますが、具体的にどのような症状なのでしょうか。以下では、むちうちに関する基本的な事項について説明します。
(1)むちうちとは何か
むちうちは、主に自動車の追突、衝突、急停車などによって、首が鞭のようにしなることによって生じる症状を総称したものです。そのため、「むちうち」は正式な傷病名ではなく、正式な傷病名としては「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頚椎症」「外傷性頸部症候群」などと呼ばれます。
(2)むちうちの症状とは
むちうちの代表的な症状としては、以下のようなものがあります。
- 首の痛みや不快感
- 頭痛
- 肩こり
- めまい、目のかすみ、目の疲労感
- 手のしびれ、握力低下、指先や足の感覚麻痺
- 吐き気、不眠、うつ状態
交通事故の直後は、被害者本人は、興奮状態にあるため、上記の症状があったとしても気づかないことがあります。後日、症状が出てきたということも少なくありませんので、症状に気づいた場合には、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
2. むちうちの通院先
ではむちうちの場合、どこに受診すれば良いのでしょうか?
(1)病院(整形外科)を受診
交通事故でむちうちになった場合、まずは整形外科の病院を受診しましょう。
むちうちは首の捻挫だけでなく、脳や神経にもダメージを受けている可能性があるため、レントゲンやMRIなどの検査で状態を確認し、適切な治療方法を検討することが重要です。
また人身事故として治療費や慰謝料などの損害賠償を受け取るためには、医師が作成した診断書が不可欠です。後遺障害等級認定を受けるためには、医師に後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
(2)整骨院や接骨院は受診できる?
整骨院や接骨院に通院したい場合は、必ず整形外科の医師に相談し、許可を得てからにしましょう。
整骨院や接骨院は病院ではなく、医師がいないため、診断書の作成や後遺障害診断書の作成ができません。
そのため、整骨院に通う場合でも、継続的に整形外科にも通院し、医師による診察と適切な検査を受けることが重要です。
3. むちうちの治療方法
むちうちの治療方法には、主に牽引療法、電気療法、運動療法、温熱療法があります。痛みがひどい場合は、神経ブロック注射を行うこともあるでしょう。
それぞれの治療方法について、以下で詳しく説明します。
(1)牽引療法
機械や手で頸部を引っ張ることで、頸部の神経の圧迫を緩和し、血行を良くして症状の改善を促します。
(2)電気療法
身体に電気刺激を与えることで、筋肉をほぐし、血行を良くして症状の改善を促します。
(3)運動療法
関節が硬くなってしまうのを防ぐための可動域訓練や、筋肉の衰えを防ぐための筋力強化運動などを行います。
(4)温熱療法
ホットパックなどで筋肉を温めることで、血行を良くし、症状の改善を促します。
(5)神経ブロック注射
痛みが強い場合に、局所麻酔薬を神経や神経周辺に注射して痛みを取り除く治療法です。麻酔薬によって痛みが和らぐだけでなく、血流が良くなり、自然治癒力が高まる効果も期待できます。
むちうちの治療は、医師の指示に従って適切な方法で行うことが重要です。自己判断で温めたり、もんだりするなどの行為は避けましょう。
4.治療費が打ち切られた場合
むちうちの治療費は、加害者側の任意保険会社が負担するのが一般的ですが、治療期間が長引くと、保険会社から治療費の打ち切りを迫られることがあります。
(1)治療費が打ち切られてしまったら
相手方保険会社からの打診により治療費が打ち切られてしまった場合は、以下のような対応を検討しましょう。
- 主治医にまだ治療が必要である旨を確認し、意見書を書いてもらい、加害者側の任意保険会社に提示して治療費打ち切りの延長を求める。
- 健康保険に切り替えて治療を継続し、後ほど負担分を保険会社に請求する。
- ご自身が加入している自動車保険の人身傷害保険を活用する。
上記の通り、まだ治療が必要な状態であれば、健康保険を利用して治療を続けることができます。後日、示談交渉の際に、立て替えた治療費を加害者側に請求することも可能です。
そのため、治療自体を終了するかどうかは医師と相談して決めましょう。
(2)治療費打ち切りを避けるためのポイント
むちうちの場合、治療開始から3ヶ月ほどで相手方保険会社から治療費打ち切りの打診が入ることが多いです。
治療費打ち切りを避けるためには、以下の2点がポイントとなります。
①医師の指示に従って適切な頻度で通院する
通院頻度が少なすぎると、症状が軽いか、治療に消極的と判断される可能性があります。
通院頻度が多すぎると、過剰治療とみなされる可能性があります。
②医師に症状を具体的かつ正確に伝える
治療費の打ち切りについて納得できない場合や、不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。 弁護士は、治療費打ち切りの延長交渉や、示談交渉などを代行してくれます。
5. 交通事故でむちうちを負った場合の損害賠償請求
交通事故でむちうちを負った場合、加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。請求できる損害賠償の項目は、大きく分けて以下のとおりです。
(1)治療関係費
- 入院費
- 通院費
- 手術費用
- 検査費用
- 投薬料
- 交通費
- 看護費
- 入院雑費
- 診断書の作成費用
など
(2)休業損害
休業損害とは、交通事故によるケガの治療のために仕事を休まなければならず、減少した収入を補償するものです。
会社員だけでなく、専業主婦や自営業者でも請求できます。
(3)慰謝料
以下の慰謝料を請求できます。
①入通院慰謝料
むちうちで入通院をした場合、実際に入通院した期間に応じて支払われます。
②後遺障害慰謝料
むちうちが完治せずに後遺症が残り、後遺障害と認定された場合に請求できます。認定された等級に応じて金額が変わります。
(4)逸失利益
後遺症によって将来得られるはずだった収入が減少した場合に請求できます。
6. 症状が改善しなければ後遺障害等級認定を
むちうちの症状が発症し治療を継続していても症状が改善しないことがあります。
医師から、治療を続けても意味がないと判断された場合は「症状固定」となり、治療は終了となります。症状固定時に残っている症状が「後遺障害」です。
このような場合には、後遺障害等級認定を行うようにしましょう。
(1) 症状固定とは
症状固定とは、交通事故による怪我の治療を続けても、それ以上症状の改善が見込めない状態のことを指します。医師が医学的な判断で症状固定と診断します。保険会社が判断するものではありません。
(2)後遺障害とは
交通事故が原因となって何らかの障害が残ってしまった場合には、その状態を「後遺症」といいます。そして、治療が終了した(症状固定)時点で、以下の条件を満たす後遺症がある場合には、「後遺障害」に該当し、症状に応じた等級の認定を受けることができます。
- 症状固定時点において「後遺障害等級表」に記載のある症状が残存すること
- 傷害と症状との間に相当因果関係があること
- 将来においても回復が困難と見込まれる精神的または身体的な状態であること
- 症状の存在が医学的に認められることや、少なくとも受傷状況・症状・治療経過などから現在の症状が交通外傷から生じていることが医学的に説明可能であること
(2)むちうちの場合に認定される可能性のある後遺障害等級
後遺障害等級認定の手続きを行った場合には、以下のいずれかの認定がなされる可能性があります。
①非該当
治療を継続してもむちうちの症状が残ってしまうことがありますが、むちうちの症状が残っているからといって、すべてのケースで後遺障害等級が認定されるわけではありません。後遺障害等級認定の手続きをしたとしても「非該当」として後遺障害等級認定を受けられないケースの方が多いといえます。
なお、非該当になったとしても、再度必要な検査や診断書などをそろえて異議申し立てをすることによって等級認定が変更になる場合もあります。
②後遺障害等級14級9号
後遺障害等級14級9号とは、「局部に神経症状を残すもの」をいいます。具体的には、「神経系統の障害の存在が医学的に説明可能な場合」に14級9号が認定されます。
③後遺障害等級12級13号
後遺障害等級12級13号とは、「局部に頑固な神経症状を残すもの」をいいます。具体的には、「神経系統の障害が医学的に証明される場合」に12級13号が認定されます。
14級9号と12級13号の違いは、MRIやレントゲンなどの画像所見や神経学的所見によって神経系統の障害が他覚的に証明できるかどうかにあります。
(3)後遺障害等級認定された場合には損害額が増える
むちうちで後遺障害等級認定を受けることができた場合には、治療費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料といった損害のほかに、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
たとえば、後遺障害慰謝料については、後遺障害等級認定を受けることによって、請求できる損害賠償額は大幅に増額します。
後遺障害慰謝料の金額の算定は、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準(裁判所基準とも呼ばれています)という3つの異なる基準で算定されます。このうち、基本的に、弁護士基準が最も高い金額になります。任意保険基準は、加害者側の保険会社が提示する金額であり、自賠責基準と同じかほとんど変わらないことも多いでしょう。
弁護士に交渉を依頼すれば、弁護士基準で加害者側の保険会社と交渉することが可能となります。後遺障害慰謝料の金額の目安について、以下のとおり、自賠責基準と弁護士基準の金額をまとめました。
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後遺障害等級14級9号
自賠責保険基準……32万円
弁護士基準……110万円
-
後遺障害等級12級13号
自賠責保険基準……94万円(令和2年3月31日以前の事故の場合は93万円)
弁護士基準……290万円
このように、交通事故によってむちうちの症状が残ってしまった方は、適切な後遺障害等級を獲得するためにも、専門家である弁護士のサポートを受けながら手続きを進めていくことをおすすめします。
むちうちは、症状が分かりにくく、後遺障害等級の認定を受けるのも容易ではありません。そのため、交通事故の経験豊富な弁護士に相談し、適切なアドバイスやサポートを受けることが重要です。
弁護士に依頼することで、慰謝料の増額や示談交渉を有利に進めることができる可能性があります。
7. まとめ
むちうちは交通事故、特に追突事故で起きやすいケガの一種です。
交通事故でむちうちを負った場合、治療費の打ち切りや後遺障害等級認定など、様々な問題が発生する可能性があります。
これらの問題を解決するためには、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、相手方保険会社との交渉などを代行し、適切な後遺障害等級が認定されるようサポートも行ってくれるでしょう。
弁護士に相談することで、被害者は、安心して治療に専念し、適切な賠償を受ける可能性が高まります。
- こちらに掲載されている情報は、2025年04月28日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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