
右直事故の過失割合に納得いかない|ケース別の過失割合と修正要素
右直事故とは、交差点で右折する車両と直進する車両との衝突事故のことをいいます。
右直事故の過失割合は、信号機の有無、交差点の形状、道路幅、優先関係の有無などの要素によって決まります。適切な過失割合を決定するためにも、右直事故における基本の過失割合と修正要素を押さえておきましょう。
本コラムでは、右直事故のケース別の基本的な過失割合と修正要素について解説します。
1. 【車同士】右直事故の過失割合

ケース別の車同士の右直事故の過失割合は、以下のようになります。
(1)右折車が直進車の進行道路と同一道路を対抗方向から進入した場合
信号のある交差点での右直事故
信号のある交差点での右直事故の過失割合は、右折する車両と直進する車両が対面する信号の色によって変わってきます。
信号の色 | 過失割合 |
---|---|
右折車:青信号 直進車:青信号 |
80(右折車):20(直進車) |
右折車:黄信号 直進車:黄信号 |
60(右折車):40(直進車) |
右折車:赤信号 直進車:赤信号 |
50(右折車):50(直進車) |
右折車:青信号→黄信号※1 直進車:黄信号 |
30(右折車):70(直進車) |
右折車:黄信号→赤信号※2 直進車:赤信号 |
30(右折車):70(直進車) |
右折車:青信号→赤信号※3 直進車:赤信号 |
10(右折車):90(直進車) |
右折車:赤信号(右折の青矢印あり) 直進車:赤信号 |
0(右折車):100(直進車) |
※1:「青信号→黄信号」とは、青信号で交差点内に侵入後、黄信号で右折したという意味です。
※2:「黄信号→赤信号」とは、黄信号で交差点内に侵入後、赤信号で右折したという意味です。
※3:「青信号→赤信号」とは、青信号で交差点内に侵入後、赤信号で右折したという意味です。
信号のない交差点での右直事故
状況 | 過失割合 |
---|---|
直進車の対向から右折 | 80(右折車):20(直進車) |
(2)右折車が直進車の進行道路と交差する道路から進入した場合
信号のある交差点での右直事故
直進右折にかかわらず、次のように規律されます。
信号の色 | 過失割合 |
---|---|
青信号:赤信号 | 0:100 |
黄信号:赤信号 | 20:80 |
赤信号:赤信号 | 50:50 |
信号のない交差点での右直事故
状況 | 過失割合 |
---|---|
直進車から見て左方から右折 | 60(右折車):40(直進車) |
直進車から見て右方から右折 | 70(右折車):30(直進車) |
信号のない交差点での右直事故の過失割合は、右折する車両と直進する車両の優先関係によって変わってきます。
①同程度の道幅である場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
直進車から見て左方から右折 | 60(右折車):40(直進車) |
直進車から見て右方から右折 | 70(右折車):30(直進車) |
②一方の道幅が明らかに広い場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車が狭い道から広い道に出る | 80(右折車):20(直進車) |
右折車が広い道から直進車の向かう狭い道に入る (直進車から見て右方から右折) |
50(右折車):50(直進車) |
右折車が広い道から直進車の進入してきた狭い道に入る (直進車から見て左方から右折) |
40(右折車):60(直進車) |
③一方が優先道路である場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車が非優先道路から優先道路に出る | 90(右折車):10(直進車) |
右折車が優先道路から直進車の向かう非優先道路に入る (直進車から見て右方から右折) |
30(右折車):70(直進車) |
右折車が優先道路から直進車の進入してきた非優先道路に入る (直進車から見て左方から右折) |
20(右折車):80(直進車) |
④一方に一時停止規制が設けられている場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車側に一時停止の規制 | 85(右折車):15(直進車) |
直進車側に一時停止の規制があり、直進車の向かう道に入る (直進車から見て右方から右折) |
40(右折車):60(直進車) |
直進車側に一時停止の規制があり、直進車の進入してきた道に入る (直進車から見て左方から右折) |
30(右折車):70(直進車) |
(3)丁字路交差点での右直事故
丁字路交差点での右直事故の過失割合は、右折する車両と直進する車両の優先関係によって変わってきます。
状況 | 過失割合 |
---|---|
同程度の道路幅である場合 | 70(右折車):30(直進車) |
直進車側の道幅が明らかに広い場合 | 80(右折車):20(直進車) |
右折車側に一時停止規制が設けられている場合 | 85(右折車):15(直進車) |
直進車側が優先道路である場合 | 90(右折車):10(直進車) |
(4)交差点以外での右直事故
交差点以外での右直事故の過失割合は、右折する車両が道路から道路外に出るのか道路外から道路に侵入するのかによって変わります。
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車が道路から道路外に出る場合 | 90(右折車):10(直進車) |
右折車が道路外から道路に侵入する場合 | 80(右折車):20(直進車) |
2. 【車対バイク】右直事故の過失割合

ケース別の車対バイクの右直事故の過失割合は、以下のようになります。なお、車対バイクの事故の場合、車同士の事故に比べて、バイク側の過失割合が低くなる傾向があります。バイクは、車よりも車体が小さく、被害が大きくなりやすいというのがその理由です。
(1)右折車が直進車の進行道路と同一道路を対抗方向から進入した場合
信号のある交差点での右直事故
信号のある交差点での右直事故の過失割合は、車対バイクのケースでも車対車のケース同様に、右折する車両と直進する車両が対面する信号の色によって変わってきます。
信号の色 | 過失割合 |
---|---|
右折車:青信号 直進バイク:青信号 |
85(右折車):15(直進バイク) |
右折車:黄信号 直進バイク:黄信号 |
70(右折車):30(直進バイク) |
右折車:赤信号 直進バイク:赤信号 |
60(右折車):40(直進バイク) |
右折車:青信号→黄信号 直進バイク:黄信号 |
40(右折車):60(直進バイク) |
右折車:黄信号→赤信号 直進バイク:赤信号 |
40(右折車):60(直進バイク) |
右折車:青信号→赤信号 直進バイク:赤信号 |
20(右折車):80(直進バイク) |
右折車:赤信号(右折の青矢印あり) 直進バイク:赤信号 |
0(右折車):100(直進バイク) |
信号の色 | 過失割合 |
---|---|
右折バイク:青信号 直進車:青信号 |
70(右折バイク):30(直進車) |
右折バイク:黄信号 直進車:黄信号 |
50(右折バイク):50(直進車) |
右折バイク:赤信号 直進車:赤信号 |
40(右折バイク):60(直進車) |
右折バイク:青信号→黄信号 直進車:黄信号 |
25(右折バイク):75(直進車) |
右折バイク:黄信号→赤信号 直進車:赤信号 |
20(右折バイク):80(直進車) |
右折バイク:青信号→赤信号 直進車:赤信号 |
10(右折バイク):90(直進車) |
右折バイク:赤信号(右折の青矢印あり) 直進車:赤信号 |
0(右折バイク):100(直進車) |
信号のない交差点での右直事故
状況 | 過失割合 |
---|---|
バイク直進・車右折の場合 | 85(右折車):15(直進バイク) |
バイク右折・車直進の場合 | 70(右折バイク):30(直進車) |
(2)右折車が直進車の進行道路と交差する道路から進入した場合
信号のある交差点での右直事故
信号機のある交差点で右折車が直進車の進行道路と交差する道路から進入した場合と比べ、バイク側に10%程度有利に修正します。
信号のない交差点での右直事故
信号のない交差点での右直事故の過失割合は、右折する車両と直進する車両の優先関係によって変わってきます。
①同程度の道幅である場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
直進バイクから見て左方から右折 | 70(右折車):30(直進バイク) |
直進バイクから見て右方から右折 | 80(右折車):20(直進バイク) |
状況 | 過失割合 |
---|---|
直進車から見て左方から右折 | 50(右折バイク):50(直進車) |
直進車から見て右方から右折 | 60(右折バイク):40(直進車) |
②一方の道幅が明らかに広い場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車が狭い道から広い道に出る | 85(右折車):15(直進バイク) |
右折車が広い道から直進バイクの向かう狭い道に入る (直進バイクから見て右方から右折) |
60(右折車):40(直進バイク) |
右折車が広い道から直進バイクの進入してきた狭い道に入る (直進バイクから見て左方から右折) |
50(右折車):50(直進バイク) |
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折バイクが狭い道から広い道に出る | 65(右折バイク):35(直進車) |
右折バイクが広い道から直進車の向かう狭い道に入る (直進車から見て右方から右折) |
40(右折バイク):60(直進車) |
右折バイクが広い道から直進車の進入してきた狭い道に入る (直進車から見て左方から右折) |
30(右折バイク):70(直進車) |
③一方が優先道路である場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車が非優先道路から優先道路に出る | 90(右折車):10(直進バイク) |
右折車が優先道路から直進バイクの向かう非優先道路に入る (直進バイクから見て右方から右折) |
50(右折車):50(直進バイク) |
右折車が優先道路から直進バイクの進入してきた非優先道路に入る (直進バイクから見て左方から右折) |
40(右折車):60(直進バイク) |
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折バイクが非優先道路から優先道路に出る | 70(右折バイク):30(直進車) |
右折バイクが優先道路から直進車の向かう非優先道路に入る (直進車から見て右方から右折) |
30(右折バイク):70(直進車) |
右折バイクが優先道路から直進車の進入してきた非優先道路に入る (直進車から見て左方から右折) |
20(右折バイク):80(直進車) |
④一方に一時停止規制が設けられている場合
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車側に一時停止の規制 | 85(右折車):15(直進バイク) |
直進バイク側に一時停止の規制があり、直進バイクの向かう道に入る (直進バイクから見て右方から右折) |
55(右折車):45(直進バイク) |
直進バイク側に一時停止の規制があり、直進バイクの進入してきた道に入る (直進バイクから見て左方から右折) |
45(右折車):55(直進バイク) |
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折バイク側に一時停止の規制 | 65(右折バイク):35(直進車) |
直進車側に一時停止の規制があり、直進車の向かう道に入る (直進車から見て右方から右折) |
35(右折バイク):65(直進車) |
直進車側に一時停止の規制、直進車の進入してきた道に入る (直進車から見て左方から右折) |
25(右折バイク):75(直進車) |
(3)交差点以外での右直事故
交差点以外での右直事故の過失割合は、右折する車両が道路から道路外に出るのか道路外から道路に侵入するのかによって変わります。
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折車(対向車)が道路から道路外に出る場合 | 90(右折車):10(直進バイク) |
右折車が道路外から道路に侵入する場合 | 90(右折車):10(直進バイク) |
状況 | 過失割合 |
---|---|
右折バイクが道路外から道路に侵入する場合 | 70(右折バイク):30(直進車) |
3. 過失割合が修正されるケースとは
ここまで右直事故の基本の過失割合を紹介しましたが、一定の事情がある場合には、基本の過失割合が修正されることがあります。
(1)右直事故の修正要素
右直事故の過失割合の修正要素としては、以下のものが挙げられます。
右折車側の過失を高める要素
-
①徐行なし
法律上の徐行とは、車両が直ちに停止できるような速度で進行することをいいます。過失の修正要素としての徐行は、右折車として通常の速度を意味し、法律上要求される徐行である必要はありません。
-
②直近右折
直近右折とは、直進車の至近距離で右折することをいいます。至近距離での右折は、直進車の回避可能性が低くなりますので、過失の修正要素となります。
-
③早回り右折
早回り右折とは交差点中心の直近の内側を進行しない右折方法をいいます。
-
④大回り右折
大回り右折とは、あらかじめ道路の中央に寄らない右折方法をいいます。
-
⑤合図なし
右折時に方向指示器などにより合図をしない場合、直進車が対向車の右折を予見することができませんので、過失の修正要素となります。
直進車側の過失を高める要素
-
①既右折
既右折とは、直進車が交差点に進入する時点において、右折車が右折を完了していることまたはそれに近い状態であることをいいます。
-
②速度違反
時速15㎞以上の速度違反がある場合です。
時速30㎞以上の速度違反がある場合には、より過失が高まります。
-
③減速なし
信号機のない交差点で直進車が減速しなかった場合には、直進車側の過失が加算されます。
(2)右直事故で可能な損害賠償請求
右直事故により怪我をした被害者の方は、以下のような損害を請求することができます。
積極損害
積極損害とは、事故がなければ被害者が出費しなかった費用をいいます。積極損害に該当するものとしては、以下の損害が挙げられます。
- 治療費
- 通院交通費
- 入院雑費
- 付添看護費
消極損害
消極損害とは、交通事故がなければ被害者が本来得られたはずの利益をいいます。消極損害に該当するものとしては、以下の損害が挙げられます。
- 休業損害
- 後遺障害逸失利益
- 死亡逸失利益
慰謝料
慰謝料とは、被害者が被った精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。交通事故の慰謝料には、以下の3つがあります。
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
- 後遺症慰謝料
- 死亡慰謝料
4. 右直事故の過失割合での弁護士の弁護活動
右直事故の過失割合で争いがある場合には、自分で対応するのではなく弁護士に依頼するのがおすすめです。
(1)適正な過失割合の認定
右直事故の過失割合は、信号機の有無、交差点の形状、道路幅、優先関係の有無などの要素により基本の過失割合が決まり、個別具体的な事情に応じて基本の過失割合を修正していくことで決定します。
しかし、保険会社から提示される過失割合は、修正要素を加味しておらず、被害者にとって不利な内容であることがあります。適正な過失割合を認定するには、具体的な事故状況を被害者が立証していく必要がありますが、それには専門家である弁護士のサポートが不可欠です。
過失割合は、被害者に支払われる最終的な賠償額にも影響してくるので、適正な過失割合を認定するためにも、まずは弁護士にご相談ください。
(2)損害賠償金の増額を期待できる
保険会社から提示される損害賠償金は、裁判になった場合に認定される金額と比較するときわめて低い金額であることが多いです。
弁護士であれば、被害者にとって有利な「裁判所基準(弁護士基準)」に基づいて保険会社と交渉をすることができるため、被害者に支払われる損害賠償額の増額が期待できます。
(3)保険会社の対応や手続きを任せられる
仕事や家事にくわえて、怪我の治療が必要な状況で保険会社の対応もしなければならないのは、被害者にとって大きな負担となります。
弁護士に依頼すれば、保険会社との対応や手続きをすべて任せることができるため、事故対応の負担や労力を大幅に軽減することが可能です。
- こちらに掲載されている情報は、2025年03月03日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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