携帯電話を使用したら懲役刑? ながら運転の厳罰化で変わったこと
自動車の運転中にスマートフォンでSNSをチェックしていたために、歩行者に気づかず衝突してしまうなど、いわゆる「ながら運転」を原因とした痛ましい事故が後を絶ちません。
事故の増加を受けて道路交通法が改正され、「ながら運転」に対する罰則が強化されました。今回は「ながら運転」の内容と、法改正による具体的な変更点についてご紹介します。
1. 「ながら運転」にあたる行為とは
カーナビの搭載、スマートフォンの利用が当たり前になるにつれて「ながら運転」という言葉もよく聞かれるようになりました。ここではまず、「ながら運転」の内容とその危険性について確認していきます。
(1)「ながら運転」とは
「ながら運転」とは、スマートフォンの操作など運転以外の行為をしながら車やバイクを進行させることです。法律用語ではありませんが、一般的によく使われていますので聞いたことがあるのではないでしょうか。
道交法第71条5号の5では、車やバイクの運転中に次の行為をすることを禁じています。
- スマートフォンや携帯電話を持って、通話のために使用する
- スマートフォンや携帯電話、カーナビの画面を注視する
「通話のための使用」とは通話をする、着信を確認する、留守電を聞くなどの行為、「画面の注視」とはSNSを閲覧する、メッセージを送信する、ゲームをする、カーナビを操作するといった行為が該当します。
また、前述の道交法第71条5号の5には該当しませんが、一般的には次のような行為も、ながら運転と認識されています。
- タバコを吸う
- 食べ物を食べる
上記の行為は明確に法律で禁じられていませんが、運転に集中できなくなるため事故につながるおそれがあります。そのため安全配慮義務違反(道交法第70条)に問われる可能性があります。
(2)ながら運転の危険性
ながら運転は「ほんの数秒だから大丈夫」「これくらいで事故は起きない」と思う運転者もいるでしょう。ですが車は時速60キロで走行していた場合、2秒間で約33メートルも進みます。
スマートフォンを使用していたため数秒間、歩行者に気づくのが遅れただけで、大きな事故につながる可能性があるのです。
2. ながら運転の厳罰化で変わったこと
改正道路交通法の施行により、令和元年12月にながら運転が厳罰化されました。具体的な変更点をご紹介します。
(1)運転中のスマートフォン・携帯電話使用
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違反点数
1点 → 3点
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罰則
5万円以下の罰金 → 6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
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反則金
大型車7000円 → 2万5000円
普通車6000円 → 1万8000円
違反点数は3倍、反則金は約3倍になったほか、罰則も罰金のみから懲役刑も加えられるなど、全体的に厳罰化されました。
(2)運転中のスマートフォン・携帯電話、カーナビ注視で事故を起こした・起こしかけた
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違反点数
2点 → 6点
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罰則
3か月以上の懲役または5万円以下の罰金 → 1年以下の懲役または30万円以下の罰金
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反則金
大型車1万2000円 → 対象外となり事件化
普通車9000円 → 対象外となり事件化
違反点数は3倍、罰則も大幅に強化されています。
また交通反則通告制度に基づく反則金の対象外となりました。交通犯則通告制度では、違反の程度が軽いケースについては反則金を納めることで刑事事件化はしないようにしています。いわゆる「青キップ」です。
ながら運転による事故は、反則金の対象外となったため、原則としてすべて刑事事件として処理されます。無免許運転などと同じ「赤キップ」に変わったのです。
また違反点数が6点にアップしたため、過去に違反がなくても、1回のながら運転による事故で免許停止になります。
(3)ながら運転の事故件数
厳罰化の背景にあるのは、ながら運転の増加、事故件数の増加です。
警察庁の統計によると、携帯電話やカーナビを使用していた際の事故は、平成30年は2790件です。
事故の内訳としては「カーナビなどの画面の注視」がもっとも多く、次いで「携帯電話などの画像目的使用」です。
そこで令和元年12月に罰則が強化されました。その結果、ながら運転を原因とする事故は大幅に減少しました。令和2年の事故件数は1287件と、平成30年と比べると半分以下です。
事故件数が減少した理由には厳罰化や警察のキャンペーン、取り締まりの強化以外に、新型コロナウイルスの影響による外出自粛などさまざまな要因が考えられます。ただし前述の厳罰化などが、少なからず運転者の心理を変え、事故を減らすことにつながったことは間違いないでしょう。
ながら運転は被害者の人生も、加害者の人生も一変させることがあります。「少しだけならいいだろう」と油断せずに、その危険性や罰則について、この機会にぜひ理解しておいてください。
- こちらに掲載されている情報は、2024年08月11日時点の情報です。最新の情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
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